甘さと、逞しさと@2011 J.League Division1 第13節 ベガルタ vs Fマリノス
真摯に、全力で、手を抜かずにプレーするチームは、本当に強かった。
しかし、渡り合った。追いついた。
まだまだ、もっともっと、強くなれる。
2011 J.League Division1 第13節
F.Marinos:69'谷口博之 Vegalta:20'赤嶺真吾
Fマリノススタメン:GK飯倉大樹"掴みつつある「冷静さ」"、DF小林祐三"戦える男"、栗原勇蔵"空中戦なら負けない!"、中澤佑二"バッチバチのCK争い"、波戸康広"祝・J1 350試合出場!/350試合出てる選手がするプレーじゃない"、MF中村俊輔"絶妙の"右"足"、小椋祥平"見いだせなかったパスコース"、兵藤慎剛"動き・崩し"、谷口博之"値千金・二戦連発!"、FW渡邉千真"決めきれず"(→62'金根煥"ストロングポイント")、大黒将志"チャンス、来ず"(→76'長谷川アーリアジャスール"伝わる「必死」"
ベガルタスタメン:GK林卓人、DF菅井直樹、鎌田次郎、曺秉局、朴柱成、MF角田誠、富田晋吾(→85'高橋義希)、梁勇基、関口訓充、FW太田吉彰(→74'中島裕希)、赤嶺真吾(→90'+1'松下年宏)
《review》
様々なディスアドバンテージを背負いながら、未だ無敗。仙台がその力を示し始めたのは立ち上がりを過ぎた辺りから。
ポーズじゃない、本気でボールを奪う意志を込めて足元刈り取る勢いのアプローチ。抜群の出足でコンタクト恐れず身体ごと突っ込んでいくルーズボールへの執着。時間も余裕も奪い去るような切り替えの速さ。ピッチを幅広く使いつつ的確なタイミングでサポートが生まれるポゼッション。常にボールが出たかのように最後まで走りきるダイナミズムアクション。
ひとつひとつのプレーがおざなりではなく、手を抜かずにやりきっていく。その姿勢をフィールドプレーヤー全員が持ち続ける。それがどれだけ尊く、そして、どれだけ意義のあることか……。その姿勢がゴールを導く。
左サイド朴柱成がアウトスイングのアーリークロス。このボールは大きく、ファーに流れる。このボールに対して「誰も触らない、切れる」とジェスチャーをしつつボールを流した波戸の思惑を裏切るように菅井が全速力で走り込んでエンドライン際ダイレクトで折り返し!波戸は菅井の姿を見て慌てて距離を詰めて頭に当てるも、このタッチでボールサイドに寄っていた佑二の頭を越えゴール前でフリーとなっていた赤嶺にどんぴしゃり。赤嶺はこのクロスをヘッド!飯倉、ゴールカバーに入っていた勇蔵の届かないバーすれすれのコースに決めた。ベガルタ先制。諦めずに走り込んで折り返した菅井、又、その可能性を信じてポジションを取っていた赤嶺の姿勢が実ったゴール。横浜にしてみれば波戸の油断と不注意が招いた失点。
その後も仙台ペースは変わらず。甘いプレーは逃さず、激しくシビアな寄せで横浜に圧力を掛け、簡単に攻撃に出させない。横浜としては反応早く縦パスのコースを遮断されてしまうためボールを運ぶにも一苦労だったが、サイドにポイントを作りつつ斜めの楔を足がかりに相手をずらす事で仙台のブロックを崩しにかかる。しかし、同点ゴールは生まれず。
後半序盤も仙台ペースは変わらず。サイドからの崩しに翻弄されてゴールエリアまで進出されるシーンを作られたり(ループ気味に狙った角田のシュート、リフレクションに詰めた赤嶺のシュート、飯倉が2連続でセービング!)、スルーパスに対しセルフジャッジが絡む形で関口に抜け出され、飛び出した飯倉もかわされるが間一髪(波戸が寸前のところでカバー)、と苦しい状況は変わらず。しかしここを凌いだことが後々生きる。
時間が進むに連れ、仙台の出足が鈍り、中盤に余裕が出来る。そして、ハイタワー・クンファンを最前線に置くことでストロングポイントを作る、これでゲームの潮目が変わる。サイズのない仙台ディフェンスに対し、クンファンは明らかなストロングポイントとなり、意識せざるを得ない状況に。明確なポイントが生まれたことで彼の高さを使いつつ攻撃を仕掛けていくと、同点ゴールが生まれる。
右サイド小林祐三が深い位置から中に切れ込むドリブルで二人を引きつけると近い距離にサポートに入った俊輔へ、俊輔ボックス内細かなタッチで空間を作りつつ右足でふわっとした柔らかいクロス!このクロスに合わせたのは中央でフリーとなっていた谷口!身体一杯ひねってのヘッド!ファーサイドに飛んだボールがサイドネットを揺らしてゴール!同点!同点!谷口偉い!良く決めた!大黒・谷口・クンファンがターゲットとしてゴール前に入り、大黒のアクション、クンファンの存在感のアシストもあって中央の谷口が浮いた感。仙台ディフェンスとしてはエアポケット。俊輔の洞察力と右足の精度も光った。
これでゲームは一気に熱を帯びる。横浜は押せ押せで逆転を狙い、仙台も守りつつ鋭いカウンターで応戦。しかし、互いにチャンスは作れどゴールを導き出すことは出来ず。結局ゲームはこのまま。緊迫した好ゲームはドローで幕を閉じた。
《impression》
/negative/
・改めて、当たり前のことを当たり前に、突き詰め、やりきるプレーを表現した仙台の姿勢は見事だった。そのチームと対峙して見えたのが、横浜の「甘さ」だったのかも知れない。例えば失点シーン、もしセルフジャッジせずに最後までボールサイドに1歩でも2歩でも距離を詰めれていたら、クロスを身体に当て防ぐことが出来たかもしれない。又、このプレーだけじゃない。ファーストタッチ後のボールの扱い、バックパスの強さ、動き直し、サポートアングルの意識など、やり抜くチームを前に小さな部分の「甘さ」が表面化し、突かれてしまった。名将・岡田武史の言葉「勝負の神は細部に宿る」ではないけれど、ほんの小さな事が勝負を分けることがある。だからこそ、この日の苦き失敗を無駄にしないようにしないとね。
※逆説的に、もっと突き詰められる「余地」があるとも思う。ほんの小さな事からで構わない。アプローチ、あと一歩距離を詰めよう。ボールを奪われてからの5秒間だけはフルパワーで守備を頑張ろう。ルーズボールの一歩目はまず出ることを考えよう。バックパスの時は強いパスを出そう。前に抜けるアクションの時は走りきろう。凄い小さな事かも知れないけどこういう事が出来るようになったらプレーの質は絶対に上がる。意識レベルのことだけど、当たり前のことでもある。当たり前のことを当たり前に、それがしっかり出来るチームになったとき、横浜はもっと強くなれる。
/positive/
・ビハインド後、仙台は厳しいアプローチでボールサイドにプレッシャーを掛けながらも、自陣でしっかりとブロックを組んで横浜の攻撃を制御しに掛かっていたと思う。苦手な「引いた」相手、しかし、その割にはある程度の実効力を示したし、バランスという意味でもポジティブな印象を受けた。かなり仙台ディフェンスは谷口を始めとしたアタッカー陣に縦の楔が入ることを警戒して中央に網を張っていた感があったけど、その網をかいくぐるように外に起点を作り、外から中と言う形で攻撃を成立させることが出来ていた。その主役となったのが、サイドバックとサイドハーフ。非常に豊富な運動量で攻撃に絡み、積極的に仕掛けてきっかけをつくるサイドバック、そのアクションに対し、サイドハーフが的確にサポートやアクションを伴わせることで幅を付ける。この縦関係のコンビネーションは凄い良かった。例としてあげるなら、仕掛けをちらつかせつつ斜めの楔を入れ、当てた後にサポートアクションを伴わせることでずらす。もういっこ、外に引っ張り出して空いたスペースに飛び込む形でボックス内に入り込む。この形で惜しいチャンスも作れてた。又、人数の掛け方として、外は2~3人、中も2~3人とこれまでのように崩しに掛かる部分に人数を掛けすぎることがなかった。本来であれば、ズバッと中に楔を入れて、中央から崩しきる、それが出来なければ外、が理想ではあるけれど、相手の狙いを捉え軌道修正出来たことはポジティブなのかな、と。
・仙台の狙い通りの形でゲームが進められ、トドメとなるゴール寸前のところまで追い込まれてはいたけれど、そこで我慢出来た事も良かった。これまでであれば、無理して攻めに出てカウンターでどぼん、だったかも知れない。しかし、耐えるべき時を耐え、傷口を最小限に留めたことが出来たからこそ、勝ち点1を持ち帰ることが出来た。実際、仙台のパス回しに翻弄され、かなり体力的にきついゲームになった感があるけど、1人1人が役割を果たしたからこそ耐え抜けたし、飯倉の冷静なポジショニングと対応も光った。逞しく戦えるチームになってきたのかな、うん。
《gallery》
2011/5/28 J.League Division1 第13節 ベガルタ vs Fマリノス @ ユアテックスタジアム仙台(picasa/me)
(´-`).o0仙台行って参りました。結果は残念だったけど、試合としては緊張感たっぷりの痺れるゲームでイイゲーム見れたなぁと言う充実感あったりします。
(´-`).o0欲を言えばやっぱり勝ちたかったし、勝って自信を付けたかったかなぁと思うけど、仙台のクオリティが非常に高かったし、簡単ではなかったかな。
(´-`).o0まあ次、頑張りましょう。今週はいよいよナビスコ!おっと、代表戦もあるんだよね。勇蔵さん頑張れ!ということでここまで(*´ω`*)