信じ続けた者が掴んだ初勝利@2010 FIFA WorldCup SouthAfrica GroupLeague vs カメルーン
よく仕掛けた。
よく決めた。
よく競った。
よく耐えた。
よく戦った。
そして、よく勝った。
2010 FIFA WorldCup South Africa
JPN:39'K.Honda!!!!!!!!!!!!!
日本代表スタメン:GK川島永嗣"神通力"、DF駒野友一"応えた信頼"、中澤佑二"誇りを胸に果たした清算"、田中マルクス闘莉王"足りなかったピースが埋まった日"、長友佑都"ジャパニーズ・モンスター、エトーを止める"、MF阿部勇樹"全ての経験を、今ここに"、長谷部誠"逞しき背中"(→88'稲本潤一)、遠藤保仁"間に合った!"、FW松井大輔"「騙す」男の真骨頂"(→69'岡崎慎司)、本田圭佑"俺が日本を勝たせる"、大久保嘉人"らしさ、全開"(→82'矢野貴章"この時のためのスペシャルピース")
カメルーンスタメン:GKスレイマヌ・ハミドゥ、DFステファン・エムビア、ニコラ・ヌクル、セバスティアン・バソング、ブノワ・アス・エコト、MFジャン・マクーン(→75'ジェレミ)、エヨング・エノー、ジョエル・マティブ(→63'アシル・エマナ)、FWサミュエル・エトー、エリック・チュボ・モティング(→75'モダマドゥ・イドリス)、ピエール・アシル・ウェボ
東アジア選手権での失態、ワールドカップ出場国とのテストマッチ4連敗、直前に行われたジンバブエ代表との練習試合もスコアレス、内容・結果共に伴わない試合を続ける過程で岡田武史への信頼は地に落ち、期待感よりも悲観と諦観が世論の多くを占めていたのは間違いない。
しかし、彼らは勝った、勝ち取った。どんな状態でも下を向かず、諦めず、信じて、やりきった。その結果として得た『初めての「国外」でのワールドカップ初勝利』。その価値は重く、又尊い。
本当におめでとう!
"ゲームのポイント"
【色気・欲を制御し、徹底してリスクを避けたゲームプラン】
自陣で4-3(+2)でブロックを組む事もあり、ボール奪取の位置が低くなる前提の守備陣形において、奪った後にシンプルなクリア、もしくは1トップとして最前線に残る本田へのロングボールを持って押し返す形が非常に目立った。本来、これまでの日本の攻撃構築に置ける基本線はショートパスを多用したポゼッション、しかし、自陣でのロストの危険性も高く、その奪われ方如何によってはより危険な状態での応対を強いられる可能性が出てきてしまう。リスクを避けるための選択としてのロングボールの多用は、岡田武史らしい色気や欲を制御したディティールだったのかなと。
【1トップ・本田圭佑の効能】
上記にも通ずる部分ではあるけれど、決勝点を上げたと言う要素はもちろんのこと、彼がロングボールを収めた事は非常にポジティブだった。相対的な要素に置いて屈強な体躯と強さを持ったプレーヤーを避け、比較的華奢でサイズのない左サイドバックのブノワ・アス・エコトのポイントで競り合いを制す。この傾向を予めチームで共有していたこともあり、同サイドに人が集まり局面的に数的優位を生まれ、攻撃に移ることが出来、又守備に置いてもラインを上げ、ポジションを整え、又一息入れる時間を与えた。このロングボールを蹴るというディティールに置いて、そのロングボールの実効力を高めるための整備は見事な施術だった。綿密なスカウティング、チームとしての狙いの共有、もちろん本田圭佑のコンタクトへの強さとボールコントロールスキル、全てが嵌った結果だったかなと。
【松井と大久保が導き出した先制弾】
川島のパントキックを相手陣深く右サイドで本田がアス・エコトを背負いながら見事にコントロールして相手陣中央の遠藤へ落とす、遠藤は相手のアプローチをいなしパススピードの伴ったボールを松井へ。右ライン際でアス・エコトとの1vs1、松井は中央のタイミングを計りながらキックフェイクで左足に持ち替えてインスイングのキックでクロスボール、このボールに対し左サイドから大久保が斜めに入る形で中央のディフェンスを釣り、逆に逃げるようにファーへ出た本田がフリーに、その本田へ吸い込まれるようにクロスが収まり、冷静に左足インサイドで押し込んだ、という流れ。もちろん、決めた本田はもう賞賛しても仕切れない程の大きな仕事、多少の幸運はあったにしてもビッグチャンスにも動じずにきっちりとネットを揺すった事で大きな歓喜をもたらし、勝利への道標を示してくれた。ただ、その本田のゴールをお膳立てしてくれたのが松井と大久保、その仕事も称賛に値するし、素晴らしかった。
まず松井、上記の通り右サイドからの攻撃が多くなる展開の中で、彼含めて右サイドからクロスを上げるシーンはかなり多くなっていたが、大体がシンプルに早いタイミングで右足でGKとDFの間に入れるような弾道をイメージしたクロスボールばかりだった。しかし、このシーンではその早いタイミングで上げるイメージを逆手にとって大きなキックフェイクで逆を取り、余裕のある状態で良いボールを上げた。彼がサイドでボールを持つことで起点となった本田がゴール前に入る時間が出来た事も考えれば、そのプレーは少なからず価値があった。そして大久保、この試合の中でも右サイドに流れる本田が空けた中央のポジションに流れ飛び出したするシーンが見られたが、このシーンでも本田が外に流れる関係上中央でセンターフォワードの役割を担った。ここで彼の良さというか、クロスに対して斜めから本気度の伴う飛び込みを行ったことで高いカメルーンの選手達が完全に本田の存在を見失い、フリーとさせてしまった。二人の仕事が主役の活躍の場を与えたと言っても過言じゃない、それだけ素晴らしい仕事だった。
【苦境を耐え凌ぐ、アドバンテージを守る】
こうして、アドバンテージを奪うまでの条件を整えた。このゲームプランニングとディティールの整備は"リアリスト"岡田武史の真骨頂であり、又それを短期間で具現化出来た選手達のインテリジェンスと順応力は素晴らしい。
しかし、「本当の戦い」はここからだった。いくら戦術的に整えようと、ゲームプランを整えようと、スタミナが切れ、集中力が落ちる「苦しい」時間が来る。その中で相手の攻勢を耐えなきゃいけない。特に強豪と相対したとき普段にも増して緊張感を要し、コンタクトも強い、受けるプレッシャーも違う。そんな中でがくっと落ちる「時間帯」がテストマッチでも垣間見えていたし、何より「2006/6/12@カイザースラウテルン」のおぞましい記憶がある。その壁を乗り越えなきゃ世界の舞台での初勝利は上げられない。
しかし、その苦き経験を知る中澤佑二、そして「足りないピース」だった田中マルクス闘莉王を中心としたディフェンスは、守勢の中でも冷静さを失わず、跳ね返すべき箇所では強さ・高さを見せ、ボールサイドでも戦い続け、アプローチも(数回を除き)きっちりと掛け続けて相手に自由を与えなかった。不必要なファールも少なく、逆に本田圭佑がクリアボールをマイボールにし、時には突破、時にファールをもらうことでディフェンス陣に休む時間を与える。長友佑都が最も怖いサミュエル・エトーを全身全霊を掛けて張り付き、潰す、消す。それでも訪れたピンチは川島永嗣が神通力とファインセーブを持ってゴールに鍵を掛ける。チームが1つとなって集中力を保ち、声を掛け続け、戦う意志を持ち、身体を張り、1人1人が自分のタスクを全うする事で苦境を耐え凌ぐ。カメルーンが本来の力や鋭さを発揮知りきれなかったこともあるのかも知れない。しかし、その価値は落ちない。世界の舞台で「苦境を耐え凌ぎ、アドバンテージを守りきる」という世界と伍していく上での大きな成功体験のはず。大きな勝利だった。
4年前の悪夢を払拭し、(規模は小さいかも知れないけれど)8年前の熱狂がその瞬間戻ってきたような感覚を受けたこと。そして日々強くなった非難と中傷の逆風を受けながら下を向かずに前を向いてこの日の勝利だけを見据えてきた代表監督・岡田武史と日本代表の選手達の悲願成就は心から嬉しい。今、思い返しても涙が出てくる。
ただ、間違いなく大きな一歩を踏み出した。それだけ大きな事を成し遂げた。しかし、彼らが見据えるものはもっと先。そして、険しき道は続く。
だからこそ、泣いてる場合じゃないね。
ということでオランダ戦当日になってしまいましたが、どうしても書いておきたかったので。
とにかく今は前だけを向いて、信じて。
"In Takeshi Okada & His Team I Trust!"
うん。
んじゃ、ここまで。