再び生まれた「負の環」 -アジアカップ予選・バーレーン戦に寄せて-
プレッシングの機能不全に始まり、カウンターによる全体距離の間延び、バランス感覚の欠如、ビルドアップ不全……。
再び生まれた負の環、そしてまたしてもその環から抜け出すことは出来ず。
繰り返された失態、ここから学ぶべきことは必ずある。
AFC Asian Cup 2011 Qualifying Stage Day2
BAHRAIN:24'S.Isa
日本代表スタメン:GK川島永嗣"必要なのは自信"、DF内田篤人"逞しくあれ"、中澤佑二、寺田周平"不適格"、長友佑都、MF稲本潤一"過去の人"、中村憲剛、岡崎慎司(→76'興梠慎三)、田中達也(→82'巻誠一郎)本田圭佑"結果の男、発揮できず"(→63'香川真司)、FW玉田圭司"ほんとのたまちゃんじゃない"
*アジアカップ予選第2戦、バーレーン戦の雑感をば。正直に言っていい?ワールドカップ予選じゃなくて良かった……取り返しの付く失敗で良かった。代表は国の威信を賭ける誇り高きものだから、どんなゲームでも負けてイイゲームはない、訳なんだけど、このゲームに関しては、まだ失敗も許容できるゲーム。それに関しては本当に良かった、助かった。
*とはいえ、余りに酷いゲームだった。ミス多く、テンション上がらず、チームとしてのコンセプトを表現するレベルになく、相手のハイボール戦術に見事に嵌る。攻守に中途半端でカバーエリアの狭いボランチにしても、状況を考えずに上がっていくサイドバックにしても、バランス感覚が著しく欠如しており、全然修正できない。そして、メンタルバランスを崩し、プレーのクオリティが一気に急落する。チームとしても、選手としても未成熟な部分をさらけだしたゲームだったかなぁと。セットプレーに関してはこのチームが抱える顕在的なリスクだから仕方ないにしても、ね。
*「負の環」という言葉を使ったけど、チームのコンセプトが嵌らないとこういうゲームになってしまうよ……というのが見事に表面化した。この「負の環」は大雑把に分けると4つのフェイズに分けれるかな。
①個々のアプローチにおけるテンションがまちまちで高い位置でのフォアチェックが掛からない。
②攻撃スタイル・プレッシングと言うコンセプトの特性上チーム全体が前傾姿勢、所々にスペースが生まれカウンターの起点となる相手を捕まえきれない。よってラインを下げ対応せざるを得ない。
③ラインが下げされることにより、全体の距離が開く。主体的な攻撃構築能力に乏しく、アプローチへの耐性が低いため雑な攻撃構築に終始。
④高さのないアタッカー陣にアバウトなハイボールでは安定してマイボールにすることは出来ず。再び相手の攻撃を受け、なかなかラインを押し上げることが出来ない。
*普段であればこれを糧に修正……と書くのだけど、これはわかっていたことであって、新しいことじゃない。だからこそ、再び失態が繰り返された。まあ、このコンセプトに舵を切って1年足らず、勝負のゲームが続いたと言うこともあり、現実に追われていたというエクスキューズもあるんだけど、実際の所こういう脆弱性を抱えたまま、予選に臨んでいるというのは当然のことだけど、危険。
*ということでその辺にスポットを当てて、チームとして(監督に)、選手として、望むことを。
【必要なる思慮遠望 -監督に望むこと-】
決して、岡田監督の標榜するハイテンション・アグレッシブプレッシングフットボールを否定する訳じゃない。このコンセプトは、日本人選手の特性である敏捷性と持久力、戦術従順性を活かすという側面である程度理に叶ったモノであり、「嵌れば」大きな利をもたらせる。
……「嵌れば」。そう、「嵌れば」いいが、「嵌らなかった」時にどうするか。その思慮遠望がこのチームにはない、だからこそ過ちが繰り返されたのではないだろうか。
具体的な例を出せば、フォアチェック。多人数が攻撃に掛かる事の多いチームのリスクマネジメントとして、又ショートカウンターという一つの攻撃パターンとして、このチームにとってのフォアチェックはコンセプトに置ける生命線であるのは明白。しかし、気候・体調的な側面によって運動量・テンションが上がらなかったり、新しい選手の戦術理解や特徴にそぐわなかったり、相手の技術や対策によって空転させられたりと、機能しない場合も充分に考え得る。空転すれば、このチームのコンセプトは揺らぎ、チームとしての機能性を失う……そして、負の環に飲まれていく……。
どのような状況、どのような相手でも機能させられるだけの質があるならば、コンセプトの追求・深化のみでも構わない。しかし、そうではないのだから、機能しなかった場合を想定した上でもう一つのコンセプトを用意しておく必要があるのではないかなと。事実、ハイスピード・ハイテンポの中で現在の技術レベルを考えればロストを完全になくすことは考えられず、90分間激しくアプローチを掛け続ける事は難しいのだから。
岡田武史の監督の資質として最も優れたところは、冷静に状況を見極め、現実的な選択が出来ること。この敗戦から学び、軌道修正を計ってもらいたい。
【もっと逞しく、もっと自立を -選手に望むこと-】
端的に。
非常に残念だったこと。
身長差、フィジカルコンタクトの弱さが表面化し、失点を防げなかった内田篤人が、その後完全に自信を失い、ケアレスミスを頻発したこと。
カウンターへの対応に苦慮し続けた寺田周平が、パニックに陥ってあり得ないミス含めて明らかに不安定になったこと。
彼らだけじゃない。川島永嗣にしても、岡崎慎司にしても、香川真司にしても。若さ、国際経験不足から来るモノなのかも知れない。ただ、余りに脆いメンタリティには今後より厳しい舞台で戦っていく上で不安を感じざるを得なかった。
今後、より強い相手と戦っていくに辺り、ミスをすることもあるだろうし、失点に絡むこともある。ただ、その度にこのような不安定なプレーをされていては勝てるモノも勝てない。尊き失敗体験を経て、もっと逞しく。それができなければ、世界では戦えない。
そしてもう一つ。
「負の環」に嵌った時、誰もが流れに抗う事が出来なかったこと。リーダーシップを持ってチームを導くプレーヤーも、自らの判断でチームのコンセプトから外れることも厭わず流れを変えようとするプレーヤーも、ピッチ上には見あたらなかった。
ピッチにいて、感じること、出来ること、もっとあると思う。あくまでもチームコンセプトや、戦術は指針でしかなく、ピッチ上では個々の判断に任されているはず。奴隷となるだけでなく、自主自立性を持って状況にそぐう判断・行動をして欲しい。多種多面性を持つフットボール、監督の手腕だけでは及ばない部分は必ずある。その時にプレーヤーとして何が出来るか、代表選手であるならば、やってもらわないと困る。
……ジーコの時も思ったんだよなぁ。監督云々ではなく、ピッチ内で状況把握した上での戦術の取捨選択や運用。これは誰々のせいではなく日本サッカーが抱える課題。難しいけれど、オピニオンリーダーとしての役割を担う日本代表だからこそ求めたい。
にしても、Jのファンとしては少し寂しい部分もあるんだよねぇ。俊輔がいない、ヤットがいない、嘉人がいない、闘莉王がいない、楢崎がいない……エクスキューズはあるけれど、良い選手は他にもいる。その選手達のクオリティを持ってすれば、バーレーンぐらいのレベルは凌駕できてもいいはず。まあ単純な足し算でもないし、チームとしてだから、そう簡単なモノでもないんだけど、ね。てか、寺田があんな感じだったんで勇蔵を推したい。佑二とコミュニケーションが取れていて、速いし、強い。寺田や高木和道もそれぞれにいいところはあるけど、柔軟性と空中戦リアルファイトなら絶対に勇蔵。何となく岡ちゃんは背が高くて、ラインコントロールとカバーも出来る選手というのを優遇してるけど、勇蔵もカバーはもの凄いいいんだぜ?岡ちゃんがいたころとは全然違うよ?色眼鏡で見てんじゃないのー。
と、戯れ言はさておき、明後日はもうフィンランド戦。見に行けないけど、試金石になるゲームだと思うし、闘莉王とヤットの状況は気になりすぎる。後は何よりもメンタルのリカバリ。それなりにショックは大きいだろうから、何とか払拭するようなゲームにして欲しいな。まあ色々廻りはうるさくなってきたけど、逆境に強いのが岡ちゃんって気もするし。と言うことで頑張れー。
*ファン感行ってきましたー。寒かったけど、とにかく雨が降らなくて良かったー、そして面白かったー。OZマリノスに始まり、マリザイルときて、どんどんクオリティの上がってる感じで、とても素敵です。ファン・サポーターの方に向いてくれてる、そういうのを粋に感じたいね。
*で、デジカメ買ったわけですよ(脈略なし)で、色々撮ってみたのをまとめてみたので、よろしかったらどうぞ。てか、下手だからね、初心者だから!その辺を肝に銘じて見て頂けたらと。撮影指南歓迎!
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Comments
いつも楽しく読ませて頂いてます。
写真も観ました!お買いになったのは一眼レフですか!?
人の頭を中心にって意識が強いのでしょうか、フレーミングちょっと残念かもです(笑)
ファン感行けなかったんですけど、楽しさが伝わりました。
羨ましいです。
Posted by: シメオネ | February 02, 2009 02:14 PM
シメオネさん、コメントと御指南ありがとうございます!
買ったのは一眼ではないんですが、ズームの効くデジカメです。
で、確かに人の顔を真ん中に入れようとしてしまいますねー、で、上が空いちゃったりというのが良くないと言うことですね!ちょっとググってみました。もっと色々撮っていくことでうまくなりたいなーと。
でも、楽しさが少しでも伝わったなら良かったです。
ではでは、又よろしくお願い致します。
Posted by: いた | February 02, 2009 11:04 PM