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May 03, 2007

スカウティングレポート ver.フロンターレ

ここ数年、嫉妬すら感じる。

爽快かつ破壊的なフットボールには、抜群に魅力的。

未成熟な選手がどんどん成長し、チームとして熟成していく過程は、フットボールの醍醐味を味わせてくれる。

そして、アットホームかつ参加的なスタジアムの雰囲気が、足をスタジアムへと足を向けさせる。

そして、そんなチームに僕たちは常に苦杯を舐めさせられてきた。ここ2年の対戦成績はほぼ完敗に近い内容で1分け3敗。本来あるべき場所も取って代わられた。そして、日本のクラブ未踏の地を踏む先駆者となろうとしている。

飛ぶ鳥を落とす相手に、挑戦者として挑む今年初のマッチアップ。と言うことで、スカウティングレポート、川崎フロンターレ編。観戦のお供にして頂ければ。

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・ハードスケジュールにも揺らがない、築き上げられた基盤

現状分析

一昨年の再昇格からステップを飛ばして駆け上がり、昨シーズンのタイトルに手が届こうかという大躍進の末に手にしたAFCチャンピオンズリーグへの参加権。ただ、これまでの先駆者達のアジアでの苦しみに習ったとき、上積みを加えたとはいえ、このチームの戦力層では長距離遠征を伴ったハードスケジュールには相当苦労するのではないかと思われた。ましてや、シーズン前に期待の左サイドの新戦力フランシスマールが長期離脱となるなど、更なる足枷が付いたことを考えれば、その思いは強くなった。

しかし、このチームが培ってきた力はそんなに柔なモノではなかった。アジアではホームでの取りこぼしという致命的なミスがあったモノの、最大のライバルと目された全南ドラゴンズにはホーム・アウェーとも持ち前の攻撃力を発揮して快勝、日本勢初の決勝トーナメント進出をほぼ手中に収め、リーグでも安定した戦いで4勝3分け1敗、覇権を争うライバルであるガンバ、レッズに対してアウェーにも関わらず1勝1分けとその力を示している。
しかも、25戦無敗という神話とも言うべきホームでの強さを見せるレッズに、埼玉スタジアムで勝利したというのは特筆すべきこと(ナビでは勝ってるよね?)

当たり前だけど、連戦による疲労はチームを蝕んでいるはずだし、その中で選手達の好不調の波も少なからずある。しかし、それでも大崩せずに安定して成績を残している理由はどこにあるのだろうか。個人的には築き上げられた基盤の質が上げられるのではないかと考える。中村憲剛を核にした緩急自在の柔軟なフットボールスタイル、前衛的ではないが課題を一つずつ解決して研鑽されてきたディフェンス、苦しいときに頼れるバリエーションに富んだアタッカー達の力、そして悔しい経験を糧にしていくメンタリティ。スタイルとして決して真新しいモノではないが、基本に忠実でバランスが良く、勝負を分けるポイントをしっかりと抑えられているからこそ、勝負を繋ぎ止め、又勝ちきる事が出来ているのかなと。これは、関塚隆の手腕を感じずにはいられない。

現状に置いて、これだけの成績を残せることを考えても、このチームの力は高いところにある。誰ももう、このチームの快進撃を「躍進」とは呼べない。

・全てを司る「心臓」

現状分析

このチームを躍進に導いた相手を恐慌に陥れる機能的なカウンター、更なる進化の過程として研鑽されてきた巧みなゲームメイクにポジションチェンジとダイナミズムを絡めたポゼッション、このチームの攻撃は戦術的な柔軟性を携えている。ただ、これら全てに共通するのは、このチームの「顔」とも言うべき存在に成長した日本代表中村憲剛の担う役割の大きさだろう。

彼のピッチの状況を捉えるセンス、細身の体に似合わないタフな行動範囲、フリーマンを見つける視野の広さ、ファーストタッチ・ターン・シュートと全てに質を備える技術の高さ、そしてその中でも特筆すべき緩急自在で高精度のパス。彼のプレーがチームを動かし、進むべき道を定めている。

特に彼の存在が引き立つのはチームを加速させるプレー。彼が持てば、アタッカー達はスペースを見つけて一気に動き出しを開始し、中村憲剛もそれに応えて相手の急所をえぐるパスを供給する。このプレーが生まれる時、一気に速度が上がり、相手としては非常に対応しにくい。このチームが持ち得るスピードを司る存在として、彼のクオリティが必要とされている。
ポゼッションでも、サイドへの展開パス、機を見てのオーバーラップ、巧みなターンやドリブルワークからの局面打開、ミドルシュート、そしてラストパス、攻撃のアクセントとなる存在として同様のことが言えるけどね。

どちらかと言えば、使われる選手が多いチーム。我那覇のポストも、黒津のスピードも、マギヌンのダイナミズムも、活かす選手がいてこそ。ジュニーニョの怖さを引き立てる上でも中村憲剛の攻撃構築は不可欠。それだけに、彼の出来がこのチームの出来を左右するし、彼を抑えるかどうかが勝負を左右すると言っても過言ではないだろう。

対策

彼に対して特別な警戒……と書きたいけれど、前節同様首を痛めた影響で欠場が濃厚と、こんな事を書いてしまっただけにちょっと寂しかったり。ただ、Fマリノスにとってはとてもポジティブな要素。前節の戦いぶりを見ても、チームの心臓である中村憲剛不在の影響は余りに大きいように見えたからだ。

河村、谷口共に良い選手ではあるが、中村のように相手の急所をえぐるラストパスやプレーを加速させるようなプレーを期待するのは酷。そうなると、フロンターレが本来持ち得るリズムが生まれない展開が多くなるのは必然。ボールの落ち着き所を失ったことで相手のプレッシャーにまごつくことも少なくなく、リズムを変えるような一発でのパスがなくなったことでアタッカー達が能力を発揮出来るような形というのが著しく減ったのは明らか。ジュニーニョが中村不在の中でポジションを下げて攻撃を形取ろうとしていたが、そのプレーも彼の存在の穴を埋めるには至らず、影響としては非常に大きい。

そう考えると、Fマリノスがチームとして取り組んでいる前線からのフォアチェックに連動したプレッシングが嵌る可能性は高まったと言える。相手ディフェンスラインはビルドアップに長けているとは言えず、ボールの収まり所も消える。攻撃構築にただでさえ苦労している所にプレッシャーを掛ければ高い位置でボールを奪える可能性は決して低くない。もちろん、Fマリノスの選手達がハードワークし、ここ数戦のプレッシングの機能性を保つことが大前提になるのは言うまでもないが。

・原点回帰の修正策

現状分析

昨シーズン、躍進の原動力となった攻撃力の上で失点数としては決して少なくなかったフロンターレの守備陣。しかし、今シーズンは補強、全体のバランスの修正などの微調整を加えて、失点数を減らす工夫も施されている。

まず、一つは川島永嗣の加入だろう。ほぼスタメンが固定されていたフロンターレのベストメンバーの中で唯一不安定だったのがGK。昨シーズン序盤は相澤、後半は吉原と正GKが定まりきらず、又プレーの安定感を欠くことも否めなかった。その中でユース年代でも活躍を見せ将来を嘱望された質の高いGKを獲れたことは、フロンターレにとって大きなプラスと言えるだろう。川島は楢崎の陰に隠れていたモノの完成度の高い選手。初速反応、ボールハンドリング、ハイボール処理、メンタリティと全てに置いて高いレベルを備えているのは明白。特に良いのがコーチング、彼は常に声をかけ続けて後ろからチームを支えている。

そして、バランスの修正としてはボランチの役割。昨シーズン二桁得点を記録し、躍進の象徴的存在となった谷口博之に攻撃参加をある程度自重させる形にし、より守備面に重きを置いたバランスへ移行した感がある。元々、カウンタースタイルを標榜していただけに、リトリート型の迎撃ディフェンスの核となるポジションバランスに目が向いているというのは、原点回帰と言えるのかも知れない。

対策

長身で強い3バック、そして守る意識を再確認したMFが、しっかりとした迎撃体制を整えたときは固さを見せる。弱点としてスピード対応という部分が上げられるが、それもある程度引いてスペースを消すことでその弱点も補っており、自分たちの強い部分を出せるような守り方というのを志向している感があり、理に叶った守り方と言える。もちろん引くだけでなく、プレスからの守備と使い分けることも出来、成熟度としては高い。

ただ、弱点も垣間見える。ブロックディフェンスの安定感の裏で、ブロックが崩れているときの対応は曖昧な部分が残る。フレキシブルな対応にも欠けるため、ポジションチェンジや2列目からの飛び出しには対応に苦慮している姿が目立った。

上記の点と現状のFマリノスのスタイルを考えたとき、ショートカウンターという答えが浮かび上がる。そのためには高い位置で奪わなければならないが、奪えたときは今まで以上に得点の可能性は上がるだろう(当たり前だけど)遅攻に置いては、3バックの一枚を外に引き出して3バック間の距離を広げ、そこに2列目から飛び込むという形が有効。吉田がキーマンか。

逆にだめなのは、工夫のない放り込み。身長も高く、前にも強いだけに、簡単にはね返されてしまう。その辺は昨シーズンまでの対戦を思い起こせば、分かるはず。隼磨にしても、小宮山にしても、その辺は意識していかなければならない。

相手はスタンダードにしっかりと守れる相手だからこそ、こちらとしても定石と言える形を見据えながら、粘り強く好機を待ちたい。

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総括

ここ数年の対戦を振り返っても、最もポジティブな要素の揃ったゲームと言える。相手はACLも絡んだ連戦で疲弊しており、主力である我那覇がドーピング問題、そして中村憲剛も首痛で欠場が予測されるなど(何となく出てきそうな気もするんだけどナー)、満身創痍の状態。それに対して、Fマリノスは蓄積疲労こそ気になるモノの、2戦連続の快勝で勢いにも乗っており、選手達も試合をする事に自信を深めている。

しかし、これまでの相性、そしてフロンターレの地力を考えたとき、やはり難しいゲームになるのは間違いないと思う。ジェフ戦もそうだった、中村憲剛の不在はチームに暗い影を落とし、本来の爽快感溢れるフットボールは影を潜めた。しかし、ジェフに押し込まれながらも無失点でゲームを進め、なかなかチャンスを作れなかった中で日本代表候補にまで上り詰めた森勇介の独力突破が局面を切り開き、我那覇の不在でチャンスを掴んだ鄭が勢いあるヘッドで押し込む。少ないチャンスを生かして勝負を引き寄せるというのは、粘り強いチームになっている証拠。そして、何より彼らには4年間の積み上げてきた基盤がある。整理された役割、浸透したタクティクス、関塚監督の考えるフットボールの概念……、トライ&エラーを積み重ね熟成してきた基盤は揺るぎないモノであり、Fマリノスにはない。Jのトップランナーとしての力のあるチームであるということは変わらないのだ。

しかし、Fマリノスとしてはこの1ヶ月積み上げてきたサッカーをぶつけるしかない。それしか選択肢はない。1ヶ月vs4年間では、どう考えてもネガティブに聞こえてしまうかも知れないが、周辺事情は抜きにしても今回は可能性があると思っている。ベクトルの揃い始めたFマリノスには大きな勢いを感じるし、その勢いがフロンターレを飲み込んでもおかしくない。今は挑戦者として、培ってきたモノを思い切ってぶつければいい。

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*後は、細かいディティールで気になった点。伊藤や箕輪の攻撃参加を意識させており、レッズ戦やジェフ戦でも結構見られたが、ここのリスクマネジメントはほとんどないと言っていい。スライドしてそのスペースを埋めようとしているけど、逆サイドはその分空くし、スペース管理としては甘いから塞ぎ切れているわけでもない。伊藤は別にしても、寺田も箕輪も後ろを向かせられれば、脆さが出るかなーと。坂田とか、吉田に突いてもらいたい

*マギヌンの対応は、チームとして答えを持っておきたい。彼はトップ下じゃない。シャドーストライカー的で、ゴールを狙ってくる選手。しかも捕まえづらい。受け渡すのか、中盤が付いていくのか、重なったときのサイドバックのカバー含めて、一つ答えが欲しい。ジュニとマギヌンはよくポジションを入れ替えるので、その辺含めてどうやって対応していくのか、答えがないと混乱する可能性有り。

*キーマッチアップは森とマリ左サイド。中村憲剛がいなければ尚更彼への期待度は高いはず。ジェフ戦でも彼の存在感は攻守に際だっていた感があり、今やふろん太のサイドの主役。で、森(村上にしても、だね。村上も良い選手。守備のバランスが取れて、クロスに対してイメージを持っている選手、ミドルも怖い)に対して、サイドハーフが付くのか、サイドバックが付くのかという受け渡しが一つ、コミーのポジショニングはおかしいときがあるので、その辺含めて不安はある。そして森の突破に対してのコミーの対応。コミーは1vs1強いけど、森は現段階では一枚上手の選手だと個人的には感じている。でも、コミーにはやってもらわないと困る。ここで後手に陥るようだと、ちょっと厳しい

*逆に隼磨には行って欲しいね。村上は守備バランスを取れる選手だけど、隼磨のダイナミズムはチームにとって大きなキーとなっていると思うし、攻撃面に置いては彼を見切れないシーンというのが結構多い。だからこそ、隼磨のランには注目。

*もちろん、勝負に直結するジュニーニョ、鄭、黒津に対する佑二と勇蔵のマッチアップも大切よ。信頼してるけど、何度も痛い目見ているからね。集中して、前向かせない事が大切。今みたいにきつめのプレッシャーで余裕を与えず逃げるようなプレーセレクトをさせられるといいけど。ジュニーニョは裏獲ったり、逆獲ったりするのがうまいからナー

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ま、色々な視点で見てみましたが、やっぱりふろん太はイイチームで、関塚さんはイイ監督だわ。それでも、やっぱりそろそろ勝ちたいなー、今の流れを継続して欲しいし、この一戦に勝つことで自信を確信に変えて欲しい(松坂パクリました)それにしてもさ、快勝続きでも「この一戦が試金石」みたいな感覚でいるのは良い事だよね。相手に敬意を持って、自分たちに力を過信せずに謙虚に戦おうとしている。変わってきたのかな。とにもかくにも今はチャレンジャーですよ。出来ることを最大限の力で、それが一番、うん。

最初に書いた通り、観戦のお供になったらいいなと言うことで、余り信頼感はないかも知れないけど(苦笑)ということで、今日はここまで。

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