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May 13, 2007

Dr.フェルホーセンの華麗なるロジック@J1 第11節 Fマリノス vs グランパス

見事なロジックだった、悔しいぐらいに。

Fマリノスの機能性を殺し、自慢の頑強なセンターバックを精神破壊し、両手を塞いだまま、華麗に勝ち点を奪っていった。

完敗は様々な視点から考えても、合点がいく。でも、下を向いていられない。ここから、もう一度、初心に戻って。

2007 J.League Division1 第11節

Fマリノス 0-2 グランパス @ 日産スタジアム「Dr.フェルホーセンの華麗なるロジック」
Grampus:11'杉本恵太 75'片山奨典

F.Marinos Official

Fマリノススタメン:GK榎本哲也、DF田中隼磨、中澤佑二"久々のパニック"、栗原勇蔵"セオリーをもう一度"、小宮山尊信"俺たちのコミー、爺ちゃん見初める"、MF、河合竜二、吉田孝行"伝わらなかった走る意思"(→55'狩野健太"継続よ、継続"、山瀬幸宏"満喫でリフレッシュしてきなさい"(→71'清水範久)、山瀬功治"こんな日もあるさ、と言っても良いよね"、FW坂田大輔"動き出せ"、大島秀夫

グランパススタメン:GK楢崎正剛"なんだよ、空気嫁"、DF大森征之、米山篤志、吉田麻也"ハイセンス"、阿部翔平"繊細なるラストパスに巧"、MF金正友、藤田俊哉(→88'竹内彬)、山口慶、本田圭佑、FW杉本恵太"スピード違反です、代表でも"(→68'片山奨典"下の名前が読めないんだよ、リーグ初ゴール")、フローデ・ヨンセン"ロングボール大国の巧さと強さ"

開幕戦以来の14:00KickOff、日差し降り注ぐ日産スタジアム。ちょっと早い気もするが、ビールがおいしく感じられる陽気(飲んでないが)ただ、3万越えを果たしたゴールデンウィーク直後のゲームでしかも好天にも関わらず、19000という観客数は少々残念な入りだったか。

そんな中でのゲームのスタメン、Fマリノスはナビスコでのターンオーバーから現状に置けるフルメンバーに戻す形。ベンチにマツが戻り、日産スタジアムでも直樹コールがこだました。グランパスの方は、不調の中でFマリノス対策を施した4-4-2。センターバック不足が報じられる中で高円宮杯準優勝メンバーであり、U-18代表候補でもあるルーキー吉田麻也を本来のボランチではなくセンターバックに据え、左には阿部翔平。このシステム変更で中村直志がベンチに控える形に。

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試合展開

書くべき事が他にあるので簡単に。

Fマリノスの動きは重く、グランパスの徹底した対策が嵌ったこともあって、完全にゲームはグランパスの手中に。

集中力を欠くミスが続く中で、ヘディングで繋がれて裏に流れされると、勇蔵の処理が曖昧になってしまい、この隙を杉本に抜群の加速能力で突かれる。挟み込むように佑二がカバーに入るも抜け出されて、哲也も為す術なし。先制点を献上。

ビハインドを返したいFマリノスだったが、高い位置からのプレッシングは実効力を欠き、これまで相手を飲み込むようなパターンが嵌らない。プレス自体の躍動感、連動を欠いていたこともあるが、グランパスのプレスを避けるための施術が嵌っていた。これまでであれば前からプレスで苦し紛れに飛ばされたロングボールを佑二や勇蔵がはね返したり、隼磨やコミーが前でインターセプトするシーンが作ることで、素早くセカンドアタックに掛かれていたが、このロングボールにもグランパスは意図を持たせた。ハイボールはヨンセンに飛ばして、彼の強さ、高さを活かす形で簡単にははね返させず、前を狙うサイドバックの裏のスペースを杉本が突く形で相手を後ろ向きで対応させるような形にすることで、速いセカンドアタックを回避。その効果ばかりか、杉本の加速能力から繰り出されるシンプルなカウンターが抜群の実効力を見せ、Fマリノス守備陣は青色吐息。哲也の好セーブもあり追加点こそ防いだモノの、佑二と勇蔵には強烈な恐怖感が植え付けられてしまった。

なかなか速攻の形を作れず、ボールを持たさせる形になってしまったFマリノス。ポゼッションには一律の進化は感じさせるモノの、ここでもFマリノスの選手達の動きの重さが停滞感となって足枷となる。パスコースが複数生まれてこなかったり、ダイナミズムが生まれなかったりと、回せど回せど局面を動かせない。尚かつ、グランパスはここにも施術を施していた。4-4の2ラインによるゾーンを敷くことでバランス良くピッチをカバー、常に閉塞感を与えるようなディフェンスを実施。ディティールとしてFWのアプローチによる攻撃方向の制御、その制御を元にゾーンを収縮することによるプレッシャーとパスコース切り、そして苦し紛れの突破にはスライドしてそのコースを切っていくことで実効力を生まれさせない。結局前半のゴールチャンスはセットプレーから数本あったぐらいだった。

後半に入り、活を入れられたのかダイナミックな動き出しが少しずつ増え始め、カウンターに晒されながらもようやくこの試合初めての決定機、河合のミドルエリアからの柔らかいスペースパスに反応したのはポジションチェンジしていた吉田、裏に飛び出してボックス内で楢崎をかわそうとしたところで倒されてPKを奪取。これで同点……と思ったが、楢崎が功治のキックを読み切りこのPKをストップ。同点のチャンスを逃し、ゲームは更に苦しい状況に。

この後、狩野、ジローを投入し、中盤を活性化させる方向を獲ったFマリノスだったが、ヨンセンの強さに屈し、杉本のスピードに恐怖感を抱いていたディフェンダーの精神状態がビルドアップにも影響し、その流れにブレーキを掛ける。多少のプレッシャーやパスコースの寸断に対して、工夫する精神やリスクを冒す勇気が失われ、その結果ノッキングを引き起こし、最終的に雑なロングボールでボールをロスト。そして、流れを掴めないまま、カウンターに屈してしまう。

左サイド、ボールホルダーである阿部にはプレッシャーが掛からず、ずるずるとラインを下げるが人は捕まえきれず。阿部の選択は前はゴールに進路を取る(杉本に代わり交代で入っていた)片山へ。このスルーパスがDFラインをすり抜け、THEEND。片山が豪快に蹴りこんだ。カウンターの形の中で多くの選択肢を持ち、阿部の素晴らしいラストパス(カットされない弾道とコース、なおかつ受け手に優しい素晴らしいスルーパス)、そして片山の冷静なフィニッシュ、クオリティの伴ったカウンターだったが、この日のFマリノスの守備の混乱を表すようなディフェンスだった。

結局ゲームはこのまま、グランパスの術中から抜け出すことが出来ず、完敗という形でホームゲームを落とした。

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・完敗の要因

一つは、Fマリノスの選手達が自分たちの理想とするべき部分を表現することが出来なかったこと。コンディション的に重かった事もあるが、精神的にもプレスを掛ける意思が薄かったように思う。一つ一つのアプローチに込める本気度、それに過敏に反応して次の選択肢を消す連動などを見ても、これまでのようなボールへの「飢え」を全くと言っていい程感じなかった。好調時に「一人でもサボれば、途端に機能してしなくなってしまう」と理解していたはずなのに、多くの選手がそういうプレーをしていては、機能するわけもなかった。

そしてもう一つがグランパスのFマリノス対策、整理。

・高い位置から奪いに来るプレッシングに対して

グランパスとして一番避けたかったのは、失点する危険性の高いショートカウンター。そのための施術として取られたのが、プレスを真っ向からショートパスでかいくぐるのではなく、長いボールを使ってプレスを空転させるという策。

ただ、単純にボールを飛ばしても、中澤・栗原の前に強いCBにはね返されてしまい、結局セカンドアタックをされてしまう。そこでグランパスはそのロングボールにしっかりとしたディティールを付随させた。それが、高いボールはヨンセンへ、裏を狙うなら杉本へという使い分け。ヨンセンならそう簡単には負けず、イージーにはね返される様な事態は避けられる。実際ヨンセンは中澤に自らの存在を過剰に意識させる程の強さで、はね返されて二次攻撃、と言うシーンをほとんど作られなかった。てゆうか、逆に味方に繋いでチャンスを生み出してたし。

そして、杉本。Fマリノスのプレスの下地となるコンパクトフィールドの肝、ハイライン。しかし、ラインを上げれば裏には大きなスペースが生まれる訳で、スペースランナーとして抜群の実効力を誇る彼にとってはとてもおいしい状況だった。その通り、彼は何度もスルーパスに反応して決定機を生みだし、先制点も奪ったわけだけど、彼が裏に走ることで更なる効果を生んだ。マリノスのディフェンス陣は、彼のスピードが刷り込まれたことで自然と裏へのカバーの意識が高くなるのが自然。しかし、そうなると前を狙うと言うことが出来なくなり、Fマリノスのプレッシングは連動感を失い、結果、プレーが加速できなくなっていた。

二人の特徴あるFWの特徴を理解した上で、うまく使い分け、又、ヨンセン、杉本もその期待に応える形で抜群の良い仕事をした。そして結果として、最も怖いカウンターを消した。

*又、長いボールだけじゃなく、ボールを繋ぐときも相手のプレスに掛からないような工夫がなされていた。一人一人の技術で簡単に奪われないこともあって、ピッチを広く使うことで選手の距離感を広げ、相手がアプローチを掛けるために長い距離を走らなければならない状況を作り出し、ましてや、複数人で囲み込むのが難しい状況を作っていた。こういう状況が続くことで、プレスへの意欲が徐々に減退していった感がある。

・閉塞へ誘うゾーンディフェンス

カウンターを消したとなれば、相手のポゼッションからの攻撃を防ぐ策を考えればいい。そこで獲った策は、これまでの過程の中でFマリノスが苦しみ続けた4-4のゾーンディフェンスという選択だった。

前でコースを制限して相手の攻撃を追い込んでいき、予測できた上でそのゾーンに入ってきたら収縮して奪いに掛かる。昨年に比べればポゼッションの質は上がっており、功治・幸宏のドリブル突破による局面打開などから局面を動かすようになってきたが、そういったプレーヤーに対しても収縮してスペースを消し、尚かつ行き場を塞ぐことでその効力を消していく。

しかも、早い時間に先制点を得たことで、そのゾーンを構成する選手達は非常に慎重にゾーンを維持するような意識を保っていた。無理をする必要がないし、無理をしなくても杉本のスピードを活かしていれば、それだけでゴールチャンスとなるわけだから、その選択も又非常に理に叶っていた。

こうしてFマリノスは両手を塞がれた。プレスが機能するだけの下地がなく、フェルホーセンの華麗なるロジックがFマリノスを雁字搦めにする。二重のしがらみの付いたFマリノスに待っていたのは、完敗だけだったのは、非常に理に叶っている。

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こういう試合もある、と切り替えてしまいたくなるようなゲームだった。けど、非常にダメージの残るゲームな気がしてならない。

ある程度得ていた手応えが空虚なモノに変わる事は、非常に怖いこと。これまでは正しいと思ってやってきたことが、信じられなくなり、心理的なバックボーンが失われてしまう。この心理的なバックボーンがなくなると、一人一人の質が落ち、共通意識に綻びが生まれ、機能性が落ちていく。ましてや、選手達には大きな負担が掛かるやり方だからこそ、こういったバックボーンというのは他のチームに比べてもこの要素はとても重要だと思うわけです。

僕は前半が終わったとき、監督やコーチの刺激で何とか機能性を戻して欲しいと思っていたのだけど、そこまではやりきれなかった。もちろん簡単なことではないから、出来なかったことを非難するつもりはないけれど、これからのことを考えると少し不安でもある。ましてや、こういう試合をしてしまった。もう一度選手達をまとめ上げて、選手達に戦術を機能させるために必要な要素を徹底させることが出来るのか、ここはちょっとした正念場かも知れない。

ただ、選手達にも考えて欲しい。どうやって勝ってきたのか、どうやって良いゲームをしてきたのか。確かに、これまでのプレッシングの機能性を考えれば、次のステップに進める段階に来ているのは確か。ただ、その最低限となる要素をやった上での話、次に進めるからと言っておざなりにしてイイモノじゃない。もちろん相手は対策してくるから機能しないときもあるかも知れない。それでも、やり続けないことには良いゲームは出来ない。一つのことをまずしっかりと。もう一度、初心に返って、ね。

完敗は完敗、として切り替えることは悪い事じゃない。でも、この負けの要因や見つかった課題はチームにとっては切り替えと共に忘れてイイモノじゃない。しっかりと糧にして欲しいな。糧にしなきゃ未来はない。

*選手に関しては褒めてあげられないからやらない。佑二と勇蔵は超反省、中盤から前の選手も動かなかったことは超反省、功治と幸宏はとにかく休め。隼磨はもっと呼べ。コミーはおめでとう。

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で、試合に関係ないんだけど、コミーが代表に呼ばれちゃった!!!!!!!

超びっくり!声出しちゃったぐらいたまげた!しかも、完敗の後なのに、呼んじゃうか、爺さん!冷静に考えると、まだまだ未熟な部分もあるんだけど、積極的なプレーが出来ているし、何よりも完成度の高い選手。代表で色々なことを吸収してきてほしいなー、村井に負けるな、阿部っちに負けるな。コミー、頑張れ、超頑張れ。で、裕介も頑張れ、超頑張れ。コミーに負けるな。つーか、佑二も呼ぶのかよー、超休ませてあげたいんですけど。でも、代表合宿で杉本をいじめてきて下さい(←え?)

日本代表候補トレーニングキャンプ メンバー(5/14~16@千葉)(J's GOAL)
日本代表メンバーに中澤佑二選手、小宮山尊信選手が選出(F.Marinos Official

*杉本もおめでとう、一昨年のこのブログのJベストイレブンで「shining young talent」で選んだ記憶があるけど、動き出しと抜群のスピードは魅力だもん、横浜FC戦の動き出しも凄かったし、選ばれるのも全然不思議じゃないね。でも悔しー!黒津も良い選手だと思うから、FW戦線を激しくして欲しいな。みんな頑張れ。競争競争。

と言うことでここまで。しかし、びっくりだわ。はー、オシムたんはびっくりさせてくれるわ。

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Comments

おっしゃるとおりの完敗、それも戦略的にやられた感じでしたね。身長の低い両サイドへのロングボール、それをしっかり競り合って周囲に繋ぐポストプレー、こぼれ球とライン裏を常に狙うスピードのあるアタッカー。プレッシング崩しのお手本でやられてしまいました。

私がこの試合で気になったのは金正友です。頻繁に左サイドに侵入した彼が体格で勝ってボールを奪い、流れてきた杉本とのコンビでサイドを崩すか、上がってくるMFに渡して展開というシーンが目に付きました。小宮山と弟で対処しようとしていましたが、どちらもなかなかボールを奪えず。このところの好調は左サイドでのボール奪取→ショートカウンターというパターンが多かったですが、むしろ押し込まれている印象が強く、結果として攻撃が散発になってしまいました。

もちろん左がダメなら右や中央でと、チーム全体でフォローしなければなりませんが、疲労からかそこまでのアクションも見られず。ようやく一週間空きますから、心身ともにリフレッシュして、次戦に臨んでほしいですね。

Posted by: mone | May 14, 2007 at 12:52 PM

moneさんこんにちわ、レスが遅くなって申し訳ないです。

高い位置からのプレッシングはどうしてもリスクを背負わなければ実効性を保つのは難しいと思いますし、対策も立てやすいのかなと感じています。ま、ここからがFマリノスの次の正念場なのかも知れませんね。

>キム・ジョンウ

彼は非常にハイブリッドな選手ですね。攻守に質の高いプレーが出来て(技術もフィジカルも兼ね備えている)、動きの幅も大きい。相手にとってとても嫌な選手になっていると思います。

>Fマリノスの左サイド

元々、守備対応時へのポジショニングの明確性というのが求められていただけに、そこをうまくキム・ジョンウにつかれた形かも知れません。二人とも受動的な守備に関しては一抹の不安を残しているだけに、これからも狙われる可能性はあるでしょうね。ただ、彼らには素晴らしい部分もあるので、何とかこの課題を乗り越えていって欲しいかな。

コンディションの調整もありますが、メンタル的な意欲というモノもあると思うので、この敗戦をどのようにチームで消化するかは楽しみです。選手個々で思うこともあると思いますが、まずは選手間で意思統一をして、チームとして統一性のあるパフォーマンスをすることが大事だと思っています。次の相手は、勢いのある相手ですから、チームで戦える体制を整えて欲しいですね。

ではでは、又よろしくお願いします。

Posted by: いた | May 17, 2007 at 12:22 AM

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