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April 20, 2007

スカウティングレポート

4月1週目のサッカーダイジェストでとても興味深い企画があった。

「J1全18チームを丸裸にする!!スカウティングノート」

Jの監督経験者達が各チームの戦いぶりを分析し、誌上にその分析結果を載せることで各チームの特徴を把握してもらおうという趣旨の企画で、彼らの分析能力はさておき非常に読み応えがあった。

ただ、時と共にチーム状態も変化していく。こと、Fマリノスの変化は顕著だろう。結果は出ていないが、選手の中には少しずつ共通意識が生まれ、戦い方のベクトルも定まりつつある。そんなFマリノスの現状を「スカウティング」してみようと思う。

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・揃い始めた方向性、プレッシングスタイルへの転換

*現状分析

攻撃的なサッカー、4-3-3、マルクス・鈴木と言った新加入選手の起用が嵌らず、低迷を脱しきれなかった開幕当初、迷走とも言える模索の時期の中で光明を見いだしたのはナビスコカップ2節のアウェーエスパルス戦だった。フラット気味の4-4-2に、坂田と大島の2トップ、セントラルポジションの山瀬功治、左サイドバックに田中裕介と昨シーズン終盤を思い起こさせる起用法。そこにトップチームでのプレーに順応を見せた山瀬幸宏、幅の広い動きと経験のある吉田孝行と、若かったり、動ける選手達がスタメンに名を連ねる。そして、そんなメンバーで表現されたサッカーは、現在の日本サッカーのスタンダードとも言えるプレッシングスタイルだった。

オーバーワークとも言えるアタッカー達の前線からの追い込みに呼応するかのように、受け身になりがちだったディフェンスラインも思い切ったライン設定をすることで背中を押す、中盤の選手達は惜しみなく走ってボールを奪いに掛かる。ベクトルが揃ったことで、猛烈なプレッシングは大きな機能性を持ち、同じようなスタイルでリーグに旋風を巻き起こしているレイソル相手でも勢いのままに飲み込んで、主導権を奪うに至るまでになった。

ディティールとしては、端的に表せばハードワークと人海戦術。パスコースを切って選択肢を切り……、などと言った知的なプレッシングではなく、一人一人がアプローチに高い執着心を持ち、激しく相手を追い回すことで強いプレッシャーを掛け、追い込んだところに収縮する形で抜け道を塞ぐ、又は逃げるように出されたハイボールをはね返す、と言った形で相手のボールを奪う。付け焼き刃的でタクティカルな要素に欠けているが、このプレッシングがその日のFマリノスの出来を握っていると言っても過言ではないだろう。

*対策

ファーストアプローチをいなし、その勢いを削ぐことに尽きるだろう。その勢いに飲まれてしまうと、一気にゲームのペースを奪われかねないだけに、DFライン、そしてボランチが余裕と落ち着きを失わずにボールを動かしていくことで、相手に前からのプレスを一度落ち着かせるような形に促していくことが有効な手だてとなるだろう。カウンターに出れるようであれば、スピードのある選手にアウトサイドのスペースを狙わせることが効果的か。センターのゾーンにアバウトなロングボールを飛ばしても強いセンターバックにはね返されるだけに、彼らが制空権を握るゾーンを避けて起点を作れば、プレスの網をかいくぐるどころか、センターのゾーンから強い選手を引っ張り出すことになり、優位な状況を作り出すことも可能となる。どちらにしても、ビルドアップを司る選手達に掛かる部分が大きい。

・揺さぶることで生まれてくる隙、集中力という穴。

*現状分析

高い対人能力を誇る中澤・栗原、そして河合の組むトライアングルは、個々を見るとやはり非常に過多さを誇る。高い身体能力や高さだけではなく、中澤は歴戦の厳しい戦いをくぐり抜けた経験、栗原はスピードに優れ、河合は抜群のボールへの執着心と闘争心があるだけに、堅牢さを感じさせる。しかし、グループとしてみると、互いが互いを補完しあうような関係性は薄く、能力に依るような守り方が多く、田中隼磨、田中裕介のサイドバックの守備能力には一抹の不安もあるだけに、イメージ程堅牢な守備陣とは言えないのが現状か。

また、低迷期の負の遺産とも言うべき、セットプレー絡みの失点が目立つのは大きな穴と言える部分。集中力が切れる部分が目に付くことが大きな原因と言える部分だが、特に危うさが露わになるのはセカンドプレー。高い集中力を持ってファーストプレーを凌いだ後、セカンドボールを拾われて仕掛けられると、組織としての守りを整えきれない中でマークを捕まえきれずに失点するというシーンが非常に多い。改善が必要だが、なかなかこの課題を解決出来ない事も又、現状だ。

*対策

流れの中での有益な策としては、アウトサイドに3人の門番の誰かを引っ張り出すことが効果的。特に河合は起点を潰す意欲が非常に旺盛なだけに引っ張り出すことに関しては非常に簡単だろう。彼がセンターポジションを離れると、そこを連動して埋めるという意識は薄いだけにバイタルが手薄になり、ここで数的優位を局面的に作ることが出来れば、中澤・栗原を後手に回すことも可能か。又、Fマリノス左サイドは対人能力、連携面共に不安を抱えており、ここをうまく崩すことで突破口に出来るか。特に田中裕介と山瀬幸宏の間に生まれるスペースは、連携面が熟成されていないだけに対応が曖昧になることも多く、ポイントを作る事はさほど難しいことではない。

ディティール的にはファーサイドへのクロスに対して、サイドバックのマークをかいくぐるというのが効果的。田中裕介はまだ経験が浅く、田中隼磨はマーキングに関しては危うさが残る。中澤・栗原という壁を越えたところにオアシスが待っている。

セットプレーは上記の通り、セカンドプレー時に生まれるギャップを突きたい。ラインを上げて、カウンターに出ようとするところでマークにズレが生まれるのはもう癖みたいな感があるだけに、ここを意図的に狙うのも一つの手か。2列目から飛び込むと更に効果的。

・前で塞ぐか、後ろで塞ぐか

*現状分析

結果には残っていないが、攻撃面でも少しずつ変化は生まれてきている。高いプレッシングから坂田が裏を狙うショートカウンター、大島のポストワークへのサポートアクションからのアタック、田中隼磨・裕介の積極的なオーバーラップアクションを活かしたサイドアタック、中澤からの精度の高いフィードによるシンプルなアタックなど、選手間に狙いの共有が見られるようになることで、チャンスを生み出すことも多くなった。持ち得る能力の高さを前に出す形で山瀬功治の独力打開などが展開を動か競るようになってきており、チャンスの数自体は増えている。ビルドアップも全体の動きの量の向上、選手達のチャレンジ意欲の活性化に従って、閉塞感は少しずつ薄れ始めてきており、以前のような絶望感を感じることは少なくなった。

しかし、最後の所での技術的な精度、決定力には依然として問題を抱えており、ゴールに繋げる力は脆弱と言わざるを得ない。又、攻撃を動かすキーマンである山瀬功治の能力に依るところも大きく、彼の調子如何では再びチームが閉塞感に包まれることも想像しやすい。安定した得点力がチームに欠如している事が、低迷からのブレイクスルーを果たせない一番の原因となっていることは誰の目にも明らか。

*対策

チームとしての有効な対応策としては二つ。高い位置からのプレッシングで相手の攻撃に再び閉塞感をもたらたすか、リトリートしてスペースを消すことでアタッキングサードでの閉塞感をもたらすか。これはチームでのスタイルに合わせればいいこと。一つ言えるのは、リトリートする時は貝になってしまうことだ。人数をしっかり掛けて危険なスペースを消すことで、相手に局面打開やより精度の高いプレーを強いれば、自ずと自滅する可能性は高い。そういった状況を打破出来る可能性を持った選手は、現時点では山瀬功治と狩野健太以外になく、後ろに人数を掛けていれば彼らを捉えることも難しくない。

個の対策としては、全体でのプレッシングを重視する石崎監督ですら芽を摘む山根を付けるというぐらいの最重要危険人物である山瀬に対しては、マンマーキングよりもゾーンで警戒する方が有効か。マンマークだと技術力・運動量を兼ね備えた山瀬を一人で抑えきるのは難しく、逆に突破口とされる危険性も孕む。特別な対応はせず、危険な位置に来た時に複数で門を閉じるようにコースを切っていくことで何とか抑えたい。後は過信せず一人一人の特徴を消して、不得意なプレーを強いれば問題はない。大島はゴールから遠ざけることで危険な存在ではなくなり、坂田は前を向かせず狭いスペースでボールを扱わせることを強いることでボール奪取のチャンスとなる。山瀬幸宏はシンプルな時はきつく速いプレッシャー、持った時はステイバックで仕掛けたところを奪う、狩野は動きの幅が小さいので対面の選手のハードマークで消せる。田中隼磨は縦を切り、クロスのレコードラインを切ることでただでさえ低いクロスを更に難しい状況で上げさせる。田中裕介に対しては中を切り、縦に行かせる。こういったことを一つずつやっていけば、かなり失点の可能性を削ることが出来るだろう。

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・総括

何故、自分の応援するチームの弱点をさらけ出すような行為に至ったのか。それは、黒星を重ねて早野氏をお星様にして欲しいからでも(本質的にはそうなんだけど)、今のチームを否定するためでもない。現状を把握し、「己を知る」という行為に意味があると感じているからです。

最近、内容が良くなってきたことで選手達の口から又「自分たちのサッカー」という言葉が聞かれるようになった。ただ、その言葉を使う選手達は本当に現状を把握しているのかは常々疑問に思うことでもあった。「自分たちのサッカー」をすることが本当に正しいことなのか、どれだけ効果があるのか、それが勝利に近づく最短距離となるのか、そういうことを超越して、「自分たちのサッカー」をすることだけが正しいのだと勘違いしているように聞こえて仕方なかった。現状に置いては、選手達が話す「自分たちのサッカー」は過信にしか聞こえない。だから、現状を把握した上で「対策」として、このチームに表れている課題を表そうと思ったのです。

まだまだ、このチームには改善すべき問題も、克服すべき弱点も、選手個々が日々の鍛錬によって高めていくべき課題も沢山抱えている。しかし、「己を知らなければ」、その一歩さえ進めない。

「下手糞の 上級者への道のりは 己が下手さを 知りて一歩目」

可能性はある、その片鱗も見えている。だからこそ高める、積み上げる努力が必要なんだと思う。今は我慢の時、トライ&エラーを活かして、先に繋がるための今を過ごしてもらいたいなと。

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ま、素人のスカウティングよりも、次のトリニータ戦でシャムスカが施してくる対策を見た方が早いかも知れないと思ったりもしてる訳ですが、そんな僕はヒヨリ杉かも。でも、彼が現状のFマリノスをどう分析してどういうサッカーをしてくるのかは、楽しみでもあるし、今後を考える上では布石となるゲームになるんじゃないかと興味深い視線を向けています。ま、重要なゲームだと思うので、何よりも結果が欲しいけどね。ということでここまで。

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*ジュビロ戦のレポートの代わりでもあったりします。アジウソンは自チームの状況の悪さもあって、かなり相手の良さを消すと言うことに力を裂いてきている感がありました。そしてその策が見事に嵌った。加賀を使ったりと守備に重きを置いた4バックにファブリーズ、マルキーニョス・パラナ、菊地のトレス・ボランチでしっかりとスペースを消し、太田のスピードと若い選手の運動量を使ったカウンターで隙を突く。そして、不安定な裕介を経験の差でゴンが上回ることで繋げた虎の子の決勝点。全てはプラン通りだったと思う。それだけ僕が分析するまでもなく、今のFマリノスはわかりやすいチームなのかも知れない。

*裕介は反省、でもこういう苦い経験を糧にしてくれればいいや。でも、いつまでも失敗が許される立場じゃなくなってるのも事実。経験は積んできた、結果が欲しいね。もちろんそれは裕介に限らず、幸宏にしても、狩野にしても。

*5連戦の結果に対しての評価は、保留だね。僕はこの5連戦を犠牲にしてチームの熟成に捧げたモノだと思っている。結果を残そうと思えば、残せる方策は獲れたはずのところを無理を強いてまで強引に熟成に走った訳だから、それに伴う手応えであったり、実感というのが得れたかどうかというのがこの5連戦の価値を図るものだと思う。だからこそ、トリニータ戦からゴールデンウィークへと続くゲームでは結果が問われるモノだと思う。ここで結果を出せなきゃ、分かってるんだろうな、フロント。

*シリア戦見逃しました(泣)録画もしてない……終わった。多分スルーです、ごめんなさい……

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