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January 08, 2007

変わるもの、変わらないもの@第85回 全国高校サッカー選手権 決勝 盛岡商 vs 作陽

怪我明けのエースが美しいターンからの素晴らしいミドルを見せたら、PKを外した選手が禊ぎの同点弾、そしてチームカラーを表現するような粘り強い突破からの決勝点……筋書きがあるようなドラマティックな展開だった。それにしても、この結果は全く予想出来なかった。日本サッカーが変化すると共に高校サッカーも変わっているんだなぁ……おめでとう、盛岡商業高校。

第85回 全国高校サッカー選手権大会 決勝

盛岡商 2-1 作陽 @ 国立競技場「変わるもの、変わらないもの」
Morioka:71'林勇介 85'千葉真太朗 Sakuyou:56'桑元剛

Sports Navi

盛岡商スタメン:GK石森慎也、DF平龍介、土屋翔吾、藤村健友、中村翔、MF諸橋遼亮、松本昌大(→70'大山徹)、千葉真太朗、林勇介、FW成田大樹(→89'松葉開)、東館勇貴

作陽スタメン:GK安井豪、DF桑元剛、石崎晋也、堀谷順平、長谷川郁、MF宮澤龍二、立川雄大、酒井貴政、濱中優俊、小室俊之、FW櫻内渚(→46'村井匠)

準決勝の雨がピッチをぬかるませ劇寒の気候から一転、ぽかぽかした晴天に恵まれた今年の選手権決勝。時代の変遷か、強豪として名を馳せた鹿実や帝京や市船が出場権を逃し、国見が一回戦で姿を消した中で、勝ち残った2チームは共に初めての決勝進出の盛岡商と作陽、もちろん勝てばどちらも初優勝となる。
選手達にとっては晴れ舞台な訳だけど、そんな試合に懲罰を受け、遠征までさせた主審を使うとはね、びっくりだ。何もやらかさなかったから良かったモノの……

試合展開

立ち上がり、一気に積極的なプレーで先制点を奪いに行ったのは盛岡商。このチームの大きな特徴であるニアサイドへのロングスローで相手に脅威を与え、高い位置から厳しいプレッシャーを掛けて相手ボールを奪いそのままボックス内でのフィニッシュに繋げたりと、慎重に立ち上がろうとした作陽を飲み込む。しかし、作陽GK安井の好セーブもあってゲームは動かず。

時間が立つにつれて落ち着きを取り戻した作陽は、テンポのあるショートパスを紡ぎながら盛岡商のプレスをいなしてアタッキングエリアに入っていくシーンを増やす。細かいパスによる攻撃構築から勝負所での仕掛け、コンビネーション、オーバーラップなど味付けを変えることでサイドを崩して、盛岡商ゴールに迫るが、実らず。結局前半はスコアレスで折り返す。

前半終盤は確実にペースを取り戻した作陽は後半に入るタイミングでエースらしい村井を投入。実況では何度も「彼が入ると雰囲気が変わる」と作陽・野村監督のメッセージを伝えられ、事あるごとにカメラに抜かれたこの選手は、大会前に負傷したらしい。しかし、その言葉が決して大げさではないことを感じさせる。作陽のプレーは村井の投入でポストマンを意識しながらのプレーに変化。村井自身のコンディションは決して良さそうではなかったが(動きが重そうだった)、彼が常にポストワークを非常に強く意識し、それを使う時は早いサポートに入ってダイレクトプレーを絡めたり、その存在を囮に裏に入ったりと、盛岡商を揺さぶる。すると、その村井がゲームを大きく動かす。

右サイドバックの桑元からボックス手前で村井に楔が入ると、周囲には3人の相手ディフェンスに囲まれる。早いタイミングで落とせるサポートも来ていたが、村井の選択は相手の虚を突く引き技で美しいターン!このターンで相手をいなして前を向くと、そのまま素早く右足を振り抜く!しっかりとした状況ではなかったが放たれたシュートは非常に強烈、ボールには微妙にブロックに入ったディフェンスの足に当たって外に逃げるような変化が掛かり、GKは全く触れずゴールに向かう。このシュートはバー直撃、このリフレクションにいち早く反応したのは楔を出した桑元だった。楔を出した後リターンをもらう動きをしていた事で中にポジションを移していたこと桑元は、こぼれをそのまま頭で押し込む。これがゴールに収まり、作陽に先制点が刻まれた。
余りに素晴らしかったので補足。これまで、シンプルなプレーを志向していた村井が、このシーンではストライカーとしての感性を発揮したシーンだったかな。裁くという先入観があったからこそ、あれだけあのターンが嵌ったと思う。正直この10分間、チームタスクもあるのだろうけど、ポストワークという仕事にストライカーとしてのエゴや得点への意思というのがスポイルされていた感があったのだけど、ゴンの話す通り非常にコンパクトで速い振り、そしてあの強いインパクトはゴールを獲れる能力を持っていることを示したんじゃないかなと。

このゴールで勢いの出てきた作陽は、ポストワークとダイナミズムの融合という形で盛岡商のディフェンスを崩すシーンが増えるが、ビハインドとなった盛岡商もその脅威に怯まずに前に出る。そして、その姿勢が活き千葉の攻撃参加からの突破がボックス際でのファールを誘い、主審の家本氏はPK判定。判定的に非常に妥当。これで、同点…と思われたが、ここで神様のいたずらか、多くの観客の注視というプレッシャーか、キッカーの林はコースを狙いすぎてグラウンダーのボールは枠を捉えられず、絶好の同点のチャンスを逃してしまう。

PKを外した選手は夢遊病のようなパフォーマンスになってしまうことが多いわけだが、経験豊富な斉藤監督はすかさず林にメッセージを送る「落ち着け、下向くな」と。選手達にも伝わっている。そして、プレーもメンタルもタフな盛岡商は、ビハインドをはね返す。交代で右サイドに入った大山がフェイントを絡めて対面のディフェンスを滑らせ局面を打開すると、低いクロスを中に供給。これがファーの林に繋がると、バタバタしたモノのつま先で押し込み、同点弾。PK失敗した選手がゴールを決めて禊ぎをする。誰かが筋書きを書いたようなドラマの様にゲームが動き、ゲームは一気に過熱する。

カウンターから最前線に入ることの多くなった小室がスピードを生かしてラインブレイクアクションを見せて盛岡商のゴール前に迫ったと思ったら、盛岡商のアタッカー達が推進力を活かして局面打開して作陽ゴールを脅かす。オープンな展開は得点を予感させ、ゲームは最終局面へ。そして、上回ったのは盛岡商の突破の実効力だった。

又も右サイド、今度は成田が相手のコンタクトを受けながらもエンドライン際に運び、うまい切り返しで相手ディフェンスをいなすと、そのままマイナス気味のグラウンダーを折り返す。ニアに入った東館がスルー、その裏に入った千葉に対しては誰も作陽ディフェンスがケアしきれず、千葉はこのボールをしっかりとゴール右に沈め、残り5分の所で盛岡商が逆転とした。
この逆転弾に繋がった成田の突破、見事だった。コンタクトを受けながらも揺らがずにボールをコントロールした切り返しもそうだけど、ボールの持ち方というのかな、ボールの置き所が相手が触れないような持ち方で、それをスピードに乗りながらやっていたのはうまかった。フィジカル的なコンタクトへの強さと繊細なプレーディティール、素晴らしい。

鍔迫り合いに負けてしまった作陽は、パワープレー気味の攻撃で少ない時間に望みを託すが、最後まで盛岡商アタッカー達の前への推進力を抑制しきれず、相手を押し込みきれず。結局スコアは2-1、盛岡商が初優勝を果たし、新調された優勝旗は初めて岩手に渡ることとなった。

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ホイッスルの瞬間、盛岡商の選手達はガッツポーズし、作陽の選手達は一様に膝を突くというコントラスト。高校サッカーらしいシーンだったなぁと思いながら余韻に浸っていたのだけど、ゲームとしても高校サッカーらしいゲームだったと思う。多分、レベルとしてはユースの方が高い、洗練された戦術、選手の技術レベル、サポート態勢……。でも、高校サッカーらしいひたむきさであったり、熱感とでも言うのかな。その辺は「らしさ」が良い方向に出たと思う。そしてそれがドラマを引き起こしたりと、とても見ていて爽快感を感じるゲームだった。この辺は変わらないモノとしての残って欲しい部分かも知れないね。
ま、もちろん、ステレオタイプな感情に過ぎなくて、全てがそうだとは言い切れないし、区切る必要もないと思うけどね。

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で、大会の総括として。僕は高校サッカーに詳しくないけど、やはり時代は日本サッカーが変わることで、高校サッカーも変革の時を迎えているのかも。上記の通り、名門と言われる高校が県大会、又大会序盤に散り、実績のない高校が上に上がる。決勝に上がった2チームの他に初出場ながら準決勝まで勝ち上がった神村学園にしてもそう。毎年毎年メンバーが替わると言うことを考えれば、実績というのは指導者の手腕であったり、経験というのが紡ぎ上げたモノだと思うのだけど、トレセン制度や物議を醸し出しているテクニカルレポートの普及など、指導者の質が上がることで地域格差が狭まっている事を示しているのかも知れない。

ま、今年の結果は去年とは又違うモノだと思う。去年は野洲が洗練された技術に裏打ちされた美しいフットボールで高校サッカー界に衝撃を与えたけど、今年の盛岡商に感じたのはは高校生らしいひたむきさだった。愚直に自分たちの出来ること、得意なことを繰り返す、ニアサイド深い位置に放り込むロングスローやタフなトレーニングに裏打ちされたパワフルな局面打開。サッカー的にはいいことだけではないけれど、こういう大会が注目を集める、人気がある要素の一つが再びクローズアップされるのかなと思う。

世界的なスタンダードから外れる「80分」という試合時間、ユースに優秀な人材が集まる風潮など、人気はありながらも高校サッカーには逆風も吹いている。ただ、日本サッカーを支える裾野として、これからも廃れることなく続いて欲しいなと。中村俊輔、小野伸二、田中達也、大久保嘉人、本田圭佑、高校サッカーが生み出した才能は数多く、スタープレーヤーが生まれていると言う事実は残っているし、日本サッカーを支える人材の育成という要素を考えれば、高校サッカーは大きな日本サッカーの宝だと思う。

世界的に見れば、語る必要はないと思うけど若年化が進んでおり、そんな比較からこの高校年代にも厳しい視線が注がれている。ただ、日本の社会的体系を考えれば、欧州・南米のようにいきなり若年でセンセーショナルなデビューを飾る様な選手が多く生まれるというのは考えにくい。それだけに、プリンスリーグ、インターハイ、高円宮杯、サハラカップ、そして選手権、これらの大会が担う部分は大きい。これからはより注目したいなと、多分マリユース贔屓だろうけど。

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何か高校サッカーはなんとなーく見てたからスルーしまくってたけど、色々感じることも多かった。日本サッカーの課題を示す守備組織の発展と反比例する攻撃に置ける発展スピードの遅さ(守備は出来ても攻撃に関してはアイデアを持つ人が少ない)、野洲スタイルが与えた勝利至上主義からの変化の胎動(新世代指導者のバラエティ化)、近代化の進まない大会体系(試合時間はもちろん、選手育成を考えれば3決だってあってイイ)、いいこと、悪いこと、どっちもあるけど、ま、来年のユースシーンも楽しみだわ。と言うことで、高校サッカーも終わって、日本のサッカーシーンはとりあえず、一時の休息ですな。ということでここまで。重い課題は筆が進みませんよ、申し訳ないっす。

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*イヌーイ、テレビでもやっぱりカワイイよ。早く来ないかなー、楽しみだなー。石原くんのプレーとか、フミヤくんのプレーが見れなかったのが残念だったけど、ま、大きな怪我なく追われたのは良かったよ(フミヤくんの怪我の具合はどうなんだろ?キャンプには間に合うかな)。そういや、"俺たちのじゃない"伊藤翔はフランスに早くも渡るのね。頑張れ頑張れ。

*盛岡商の優勝で終わったけど、やっぱり今大会のシンデレラチームは八千代だろうねー。チームとしても非常に近代的だし(ジェフっぽい、千葉だし)、タレントとしても面白い選手がいた。ジュビロに行く子とジェフに行く子は、すぐは無理でも可能性を感じたし。やっぱり準決勝は今日みたいな天気でやらせてあげたかった。悲劇だよ、あのゴールは。あの瞬間、会場凍ったし。見てる方も悲劇的なまでに寒かったし(←行ったのよ、準決勝、まじ寒かった)

*たださ、やっぱり一面になるのは高校サッカーだけだよね。ユースも一面になるぐらいになったらいいねぇ。ま、そんなこと言ったらまずはJからか(苦笑)

*そうそう、一つ気になるニュースがあったの。サンフレユースのセンターフォワード、中野くんがトップに飛び級(?)昇格するらしい(2年生と言うことで、飛び級ね。真偽のほどは分からない)これは凄いいいことだと思う。あの子は本当にうまかったし可能性を感じたもん。サイズがある、身体の使い方もうまい、技術も高い、足も速い。一つ一つのクオリティが高い。伸びて欲しいね。あの選手は一歩抜ける可能性あると思うよ。

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Comments

こんばんは。
どちらのチームにも特に思い入れがなかったので、引いた目で見ながらついクラブユースと比較しながら見てしまいました。いたさんが書かれているように、俺もクラブユースの方がレベルが高いと思いました。「そこは単純に弾き返さなくても足下で止められるんじゃないかな」なんてことがよくありますからね。トーナメント仕様の『負けない』サッカーの一部なのかもしれませんが。でも得点シーンは本当に素晴らしかったですね。いいゲームだったと思います。

マリユース贔屓の身としては選手達が満員の国立でプレーできるのがすごいうらやましいです。サハラカップの決勝なんて入場無料なのにガラガラですから(涙)
あとこの年代って試合終わったあと相手チームのベンチや観客席に挨拶に行くじゃないですか。あれが個人的にはすごくいい。若い子の試合は実にすがすがしくっていいなぁって思ってしまいます。
つーことで今年もよろしくお願いします。

Posted by: こいちゃん | January 09, 2007 at 12:41 AM

こいちゃんさん、あけましておめでとうございます(挨拶し忘れた)そして、コメントありがとうございます。

>レベルの比較

静学の井田監督も仰ってましたが、選手の志向がプロに向き、スカウティングの差もあって、優秀な子はどんどんクラブに流れているようで、そういう意味ではこれからどんどんレベルの差は出てくるでしょうね。

勝利至上主義というか、AllorNothingの部分が選手達に過剰なプレッシャーを掛け、チャレンジする気持ちに規制をかけてしまっているなど、選手育成を考えると負の部分は大きいと思います。そういう意味ではプリンスリーグの担う部分というのは大きいのかな。来年はプリンスで高校の選手達がどのようなサッカーを見せてくれるのかちょっと楽しみです(まあ構築期だから余り期待は出来ないかな。てゆうか、マリユースのついでですが)

>観客

フクアリはメイン側だけとは結構入ってたから嬉しいなーと思っていましたが、これを見ちゃうと確かに羨ましいかも。しかしこれだけの注目度は凄いです。高校サッカーが持つ「すがすがしさ」というのが、日本人的メンタリティにあうというのもあっているのかも知れませんね。

クラブユースの注目度も上がるといいなぁ。プリンスの注目試合とか、高円宮杯やサハラカップ全試合中継なんてしてくれたらいいのになーとか思っております

ではでは、こちらこそよろしくお願いします。

Posted by: いた | January 09, 2007 at 06:53 AM

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