A potential risk to hold -Think about Osim's Football-
えーと、面白いエントリーを立て続けに読む事が出来て、僕も感化されたので書いてみたいと思います。ええ、後乗りですよ。読んだ時から書こう書こうと思ったわけですが、まあ反応が遅いのが僕らしいのですが、テーマとして即レスが必要な者でもないからイイかなーと。現在の日本のサッカーを表す大きなテーマだと思うし。ということで、テーマは「ポジションブレイクにより起こるポジションチェンジのリスク」ってところかな。
こちらが、ネタ元です。
「オシム日本代表対ガーナ代表」雑感 トータルフットボール懐疑論(doroguba ~football column~)
・形なきフットボールスタイルに伴う効果とリスク
「システムに大きな意義を持たない」
オシムのサッカーを表現する時によくこのような言葉が出てきたりするのですが、この言葉がチームの特徴を良く表しているのではないでしょうか。相手に合わせて変えていくバックラインの枚数、最後まで付くという意識の元のマンマーキング、運動量・機動力を備えた選手達がチャンスと見るやオリジナルポジションを捨てて最前線に出ていく……。こういう事を鑑みた時、システム的な概念に縛られずに各選手が必要な時に効果的なプレーをするということに比重が置かれており、そうなるとシステム的に持つ意義が小さいということになっているのだと思います。そして、その概念が「トータルフットボール」的とも言えるのかも知れませんね。
その中でも、このチームの一番の売りが最後の「オリジナルポジションを捨てて、攻撃に参加する」というファクターかなぁと。こういうプレーの効果と言えば、相手が捕まえづらくなって対応しづらくなる(混乱をもたらす)ことであったり、人数を掛ける事によって攻撃に厚みを付けると言う事になると思うのですが、そういう事をしていけば上がっていった選手のポジションには穴が空いてしまい、守備面ではリスクを抱える事になる。そこで必要になるのが、その穴を埋めていく作業と言うわけですね。
まあ当然とも言えるリスクマネジメントな訳ですが、そこでdorogubaさんが問題視されていたのが、そのポジションのスペシャリストではない選手がその役割をこなしきれるのか、数合わせ的なリスクマネジメントでしっかりとした守備の強度を保つ事が出来るのか、と言う部分。
現代フットボールに置いて、ポジションブレイクによるリスクテイクというのはほぼ常識となっており(最たる例がサイドバックのオーバーラップ)、そのカバーリングというのもそれに伴う形で常識として当たり前のようにやっていますが、その裏に潜むリスクというのは余り問題視されていない。攻撃的なサッカーというのがもてはやされる中で、現実的な問題として取り残されている部分なのかも知れませんね。
・継続的に抱えるリスクと付き合うために。
もし、理想論でチームを組み上げるとしたら、どのポジションも高いレベルでプレー出来るオールラウンダーが10人いるチームなのかも知れません。そうすれば、どんなにポジションブレイクを繰り返しても、誰もがどのポジションもこなせるから、入れ替わる事によって生まれるネガティブな効果というのはなくなる。ただ、それは理想論で現実的ではないかな。
ただ、オシムが「肉を切らせて骨を断つ」的リスクチャレンジ志向を持つ監督であり、これからポジションの概念の薄い縛られないサッカーを続けるのは変わらない(と個人的には思う。日本人に合う日本人的なサッカーの形成を目標に置いている訳だし。まあ変わらないという保証は出来ないし、大きな方針転換もあり得るけど)だけに、現実としてこういう問題と付き合いながらやっていく事になると思う。
と言う事で、このポジションブレイクに伴うカバーリングによるポジションチェンジによって生まれる補いきれない潜在的リスク(上記のdorogubaさんが言及されてる点ね)を、軽減させるために出来る事を考えてみようかなと。
1.視点を変えた戦術的施術
基本的に、こういう潜在的リスクを解決するためには、ポジションブレイクした選手がオリジナルポジションに帰り、秩序を取り戻すという事になる。しかし、相手はそんな時間を与えてくれないし、逆にそれを利用したいという志向を持つだけに、いくら切り替えが速くても瞬間移動が出来ない限り難しい。
でも、これがヒントになる。要は、ポジションを崩した選手がオリジナルポジションに戻る(マンマークであれば、担当する選手を捕まえる)時間を稼ぐ事、相手の攻撃を機能させないようにする事が出来れば、ある程度のリスクの軽減させる事が出来るのかなと。
そのためにすべき事というのが、フォアチェック。今も前からのプレッシングというのはやっていると思うけど、もっと激しく、執拗に、後ろに戻させるような強いアプローチを「奪われた瞬間に」やっていく。これによって、バックパスや横パスなどをさせる事でオリジナルポジションに戻る稼ぐ事も可能になると思うし、抱えているリスクを表面化させないようにする事も出来るかなと。
*実際、ただでさえ運動量が多く、90分もたないぐらいなのに更に運動量を求める事は決してクレバーじゃないんだよね。でも、このハードワークで得れる効果というのは小さくないと思う。以前、バルサやレッズががこういう事をかなり執拗にやって、高いリスクを賄っていたのはもう有名かも。もちろん全てを消せる訳じゃないし、単純なミスには対応出来ないけど。
2.ポジション概念の深い理解
これは守備に限らない事かも知れないけど、そのポジションに課される役割がどういうモノで、どういう事に気を付けて、どういう事をしていくべきかと言うのを、そのカバーに入る可能性のある選手が理解することで、能力的には埋めきれなくても、回避出来るピンチもあるのかなと。
ポジションの違いによってポジショニングの獲り方(ボールポイントによってポジションの獲り方って変わるしね。絞るのか、埋めるのかとか。まあマンマーキングだからその辺はシンプルな部分もあるけど)や守備の優先順位とか(ディレイなのか、アタックなのか。状況にもよるけど)って、結構違う。現時点では選手達の高い危機察知能力にたよっている部分が強いので、それに加えてポジション的な概念を理解する事でクオリティを高める事が可能なのかなと。
*でも、こういうのって日本では余り理解されない部分かも。ゾーンディフェンスが余り浸透していない(機能性が低い)事を見ても、ポジションが何をすべきか、そういう常識が出来上がっていないというのは結構言われている事。そういう常識が出来ていない事が個々の戦術理解の低さの一因にもなっていると思うので、そういう事を学ぶ事も又やっていける事の一つだと思う。
*例えばだけど、隼磨みたいにウイングバックはいけるけど、サイドバックになると途端にクオリティが下がってしまうと言う選手がいたりするのはその良い例。基本的にサイドバックというポジションの概念がないから、求められる役割や動き方が変わる事でプレーのクオリティが下がってしまうというのは結構ある。でもこういう概念が理解出来ていれば、案外出来ていくんじゃないかなと。ポリバレント、ユーティリティと言う言葉があるけれど、能力的に特別な事じゃなくて、その概念の理解度の差だけだと思うし。
*ボランチとセンターバックというのが一番のテーマだけど、正直センターバックの選手とボランチの選手の守り方はだいぶ違う。守備能力の問題もあるれど、ね。
リスクテイクとリスクマネジメントというのは、比例するモノであって、なくす事は出来ないわけだから、いかに賢く費用対効果的な要素を充実させていけるかが、勝敗に関わってくる事は言うまでもありません。基本的にこういうコンセプトでやっているのなら、よりリスクマネジメントに関しても追求していく事が、勝利への近道でもあると思います。まあまだ5戦目、以前書いた通り、基本的な事を選手達に植え付けさせていく事で基盤を形成している段階に過ぎないので、こういう裏の部分はまだ考えて行く時期としては早いと思うけど、これから常に「勝つ」事が重視されていく中で、絶対に無視出来ない部分でもあるだけに、こういう要素にどういう施術がされるのか、これから注目していきたいと思います。
で、次と行きたいのだけど、一気には書ききれないので2回に分けます。次のテーマは、この対比的な要素を。ポジションブレイクの対比とも言える「オリジナルポジションの持つ意味と効果」と「スペシャリストの必要性」と言うテーマかな。まあ明日になるか明後日になるかは微妙だけど。と言う事で、今日はここまで。
*私信(読んでくれるかどうか分からないけど)、dorogubaさん、非常に興味深かったです。こういうのに慣れてなくて、しかもタイミング遅くて、半分な感じなんで、非常にあれな感じなんで、もしだめだったら……ばっさりやっちゃって下さい。
*って、コメント欄に書きに行けって?だって、内向的な子なんで。
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Comments
こんばんは
面白かったです。
あまりネットでフラフラしないのですが、このエントリーから色々なサイトに飛んで、興味深い意見に逢えて愉しかったです。
ポジション概念の深い理解。なるほどね~と思いました。
続き、期待しています!
Posted by: ナツキ | October 10, 2006 10:10 PM
ナツキさん、こんばんわ。
楽しんでもらえて何よりです!ちょっとモチベーション上がりました。
オシム体勢になって、気になる部分が出てきたりするのか、非常に興味深い意見が多いですよね。楽しいです。
ポジションの概念という部分では実はオシムたんとは正反対とも言える意見の持ち主なんですけどねー。まあ、そのバランスというのがあると良いなぁと思っているところです。
続きはちょっと苦労気味?ゆったり待っていて下さい(笑)頑張ります。
ではでは、ちょっとモチベーション上がりました。ありがとうございました。
Posted by: いた | October 11, 2006 02:00 AM