« 余りに対極的な、2つのゲーム@FIFA WORLDCUP Germany2006 Round of 16 Switzerland vs Ukraine/Brazil vs Ghana | Main | 「らしさ」あっての好ゲーム@FIFA WORLDCUP Germany2006 Round of 16 Argentina vs Mexico »

June 30, 2006

「経験」という重み@FIFA WORLDCUP Germany2006 Round of 16 Spain vs France

「経験」という重みを改めて感じさせられたゲームでした。とにかくジダン、トレビアーン。

FIFA WORLDCUP Germany2006 Day19

Round of 16
Spain 1-3 France @ Hanover
ESP:27'pD.Villa FRA:41'F.Ribery 83'P.Vieira 90'+2'Z.Zidane

FIFA MatchReport

スペインスタメン:GKカシージャス、DFセルヒオ・ラモス、パブロ・イバニェス、プジョル、ペルニア、MFシャビ・アロンソ、シャビ(→72'マルコス・セナ)、セスク・ファブレガス、FWラウール(→54'ホアキン)、フェルナンド・トーレス、ビジャ(→54'ルイス・ガルシア)

フランススタメン:GKバルテズ、DFサニョル、テュラム、ギャラス、アビダル、MFマケレレ"壺"、ヴィエラ"復権"、リベリー、ジダン"時計の針を巻き戻す魔法使い"、マルダ(→74'ゴヴ)、FWアンリ(→88'ヴィルトール)

素晴らしい滑り出しを見せたスペイン、ポテンシャルが発揮されることなく苦しみ続けたフランス、ここまでのパフォーマンスは対極的、そんな決勝トーナメント一回戦ラストゲーム。EURO2000の時にドラマティックなゲームをしたマッチアップなだけに、その再現となるような熱いゲームを期待。

スペインはグループリーグ最終戦こそ内容的に優れなかったモノの完全にメンバーを入れ替えてレギュラーメンバーを休ませるという事が出来て、状態は万全。そのポジティブなイメージを掴んでいるメンバーそのまま出してくるかに思われたが、アラゴネス爺は少々メンバーを弄る。2戦目にポジティブなプレーをしたラウールとセスク・ファブレガスをスタメン起用、外れたのはルイス・ガルシアとマルコス・セナ。それ以外は2戦目と同じ。高質な中盤のボールポゼッションの中でラウール、ビジャ、フェルナンド・トーレスというトライアングルがどのような形で回っていくのかが鍵か。対するフランスの方は、ジダンとアビダルが出場停止の中で何とかトーゴに競り勝ち、グループリーグを突破したモノの、選手個々のポテンシャルをポジティブに反映させる術を見つけ出せず、まだまだラボの中から抜け出せず。ティエリ・アンリが2試合連続ゴールとようやくこの大舞台で結果を残し始めたところがポジティブな点か。この日のスタメンはアンリのワントップ、その下にリベリー、ジダン、マルダを並べる4-2-3-1という形を選択。

前半

小気味よくボールを動かしながら隙を伺うスペイン、シンプルにアンリを走らせてラインを突っつくフランスといった傾向の見えた立ち上がり。スペインはボールは回れどフランスのボランチの網に掛かる形でアタッキング・サードでの実効性が上がってこず、フランスもジダンが非常に精力的なモノの、アンリがスペインのラインディフェンスに絡め取られる形でなかなかラインブレイクとは行かず、といった感じで守備が目立つ立ち上がりとなる。ファーストチャンスはペルニアの大きく弧を描くFK(わずかに枠に収まらず、最初は完全に外れたかに思ったんだけど、ずいぶん曲がってびっくり)

閉塞感を伴う中で、その展開を動かすのはジダン。スピードや躍動感というモノは余り感じないモノの、彼の存在感が相手のバランスを崩し、技術を活かしタイミングと時間を作り、的確に使うことで効果的な形を作る。円熟という言葉がぴったりのエロいプレーを披露(特にこのプレーが良かった→マルダの中央でのインターセプトから、そのマルダからショートパスを受けると前を向き、シャビ・アロンソ、シャビのアプローチをいなしながら時間を作るキープ、手で合図を送ってループパスで右サイドへ展開すると、送られた先にはアンリが走る。完全にフリーで受けたアンリはグラウンダーの速いクロスを送り、リベリー、ヴィエラとフリーで中にいたモノの後一歩の所で届かず。痺れる)まずはフランスがリズムを握った感があった。

しかし、サッカーというのは面白いモノで、攻め手の掴めないスペインがビッグチャンスを得る。右サイド、ペルニアのCKははね返されるがそのセカンドボールをシャビ・アロンソがフォローし、ダイレクトでもう一度中に戻すと、戻りながらパブロ・イバニェスが受けようとしたところで、焦ったのかテュラムが引っかけてしまい、このプレーにロセッティはPKの判定(パブロ・イバニェスはうまく足と体を入れた)このPKをビジャがグラウンダーで左サイドネットにしっかりと沈めて、先制した。バルテズ読んでたけどねぇ、良いコースだ、さすがビジャ。良い流れでゲームを握っていたフランスにとっては痛恨の失点。

先制点を許したフランスでしたが、リズムはそのまま。速いパス回しからサイドを突いたり、アンリに裏を狙わせることで、失点を取り戻しに掛かる。アンリがなかなかスペインの高いラインを攻略できなかったものの、その攻防の中で何度もあったアンリとディフェンスラインのオフサイドラインを巡るぎりぎりの駆け引きが布石となる形で、フランスがビッグチャンスを生み出す。

マケレレが中盤でボールをカットすると、リベリーへ繋ぎ、リベリーもシンプルに高い位置に上がっていたヴィエラへ繋ぐ。スペインはフリーとなっていたヴィエラにアプローチに行きながらアンリをオフサイドポジションに置くが、ヴィエラの選択はリターン、ヴィエラに繋いだ後に一気にフリーランニングを開始していたリベリーだった。後ろから飛び出してきたリベリーに対してはオフサイドに出来ず、リベリーは素晴らしいスピードでペルニアの外を突破しラインを突破。抜け出したリベリーはカシージャスと1vs1になると、緩急を付けてカシージャスを左にかわし、そのまま流し込んだ。余りに美しいワンツー、スペインとしてはアンリを意識する余り、シンプルな攻撃に出し抜かれてしまった。これで同点。リベリーはゴールパフォーマンスの時も速い。

同点になった後、一気にプレーが激しくなったが、結局スコアは動かず。前半は1-1で折り返す。

後半

息詰まる攻防とでも言うべきか、サポ達も固唾を飲んで見守っているかのような静かなスタジアムの中で、淡々と始まる。スペインがボールポゼッションしながら隙を伺うシーンが多くなった感があるが、相変わらずアタッキング・サードではフランスの壺を押さえるようなアプローチやパスコースを切るディフェンスに遮られ、アタッカーがなかなかゴールに向かうことが出来ない。フランスも守備は安定しているが、数多くのチャンスは作れず。一度ジダンがマルダに素晴らしいループパスを出す形でラインを突破するが、マルダが浮き球を活かす形でループシュートはカシージャスの跳躍にはじき出される形で実らず。

なかなか打開のキーが見つからないスペインは早い時間帯ながら大ナタを振るう。ラウールに代えルイス・ガルシア、ビジャに代えてホアキン。彼らのアクセントとなるプレーで局面を打開することを期待しての投入か。で、そのルイス・ガルシアが入ったことで、ようやく高い位置でボールが落ち着くようになり、ある一定の効果はもたらしたかに見えたが、アタッキングエリアでは相変わらずフランスのディフェンスにやりこめられ、状況を打開できない。

しかし、それでもポゼッションを支配するスペインはもう一人の交代選手であるホアキンが右に張り出し、左はペルニアが積極的に上がることで、両サイドから敵陣深くに入りクロスからゴールを伺う。そのボールを奪ってジダンやリベリーがチャンスメイクする形でスペインの守備を揺さぶろうとするフランス。そんな状況の中で、スペインベンチが3枚目のカードを切る。シャビに代えてマルコス・セナを投入、アラゴネス爺の決断。これを見てドメネクは、マルダに代えてシドニー・ゴヴを投入。ウインガータイプのゴヴでペルニアのスペースを突こうという意図が見える。残り15分。

徐々に中盤にスペースが生まれ始めてに攻め合い、守り合う、というシンプルな攻防、その中で個人技という部分が目立ち始める。セナのミドルシュートがフランスディフェンス(ギャラス)に当たったこぼれをホアキンが拾うと、自らの仕事場右サイドから中に切れ込む、アビダルをかわして角度がないながら左足で狙うが、これは枠外。やり返す形で今度はリベリーが魅せる。左サイドFK、虚を突く形でジダンが右に大きく展開すると、良いファーストタッチでペルニアを外し、縦に切れ込むと見せて中に切り返してスペインディフェンスを振り回し、最後は近い位置にいたゴヴへ、ゴヴのシュートを引き出した(枠外)白熱した攻防は最終局面、その中で微妙な判定が勝負を分ける。

リベリーが高い位置でインターセプトすると、前にいるアンリへそのまま空いた右サイドへスルーパス、プジョルの方がボールの近くにいたがアンリの速さに恐れを抱いたのか、ボールに向かわずコースに体を入れ、結果としてアンリをはねとばしてしまう。このプレーに対して、オブストラクションを獲られ、フランスにFKが与えられ(プジョルにはイエローカード)、そのFKを蹴るのはジダン。ふわっと柔らかいボールが入ると、手前のシャビ・アロンソは後ろに流すのが精一杯。そのこぼれたボールに対し、ファーにポジションを獲ってフリーとなっていたヴィエラが反応、超近距離から押し込んだ。フランス勝ち越し。微妙な判定だけど、そういうチャンスを逃さなかったフランスを褒めるべきか。

残り数分と言うところでビハインドとなったスペインは総攻撃、どんどん相手を押し込み、テンポ早いパス回しからクロスを入れゴールに近づき、セットからのチャンスを迎え、セカンドボールもミドル、パブロ・イバニェスも上げ、フランスゴールに襲いかかるが、フランスも守備意識高く、体を投げ出してブロックに行き、後ろに戻されれば追い続けて、といった感じで対抗。気持ちと気持ちがぶつかり合う攻防はその気持ちが途切れぬままロスタイムに突入。そのロスタイムにこの日を象徴するプレーが生まれる。

疲れている中で、プレッシャーをかけ続けた恩恵か、シャビ・アロンソに対して数人で囲みジダンが引っかけてがボールを奪うと、拾ったゴヴはヴィルトールへ、ヴィルトールはダイレクトパスで外を回ったジダンへ流し、ジダンは枚数少ないスペインラインを抜け出す。ジダンが外から中という形でゴールに向かう所で、プジョルが何とか戻ったが、そのプジョルをジダンは切り返しで軽やかにかわし、カシージャスの逆を突くニアサイドのシュート!ジダン、泣かすなよ……。凄げーよ、凄すぎるよ。

囲い込みに行ったこと、そして奪った後すぐに切り替えて各自が的確なポジションを獲っていたこと、こういうのが報われたかな。最後までフランスが、そしてジダンが戦い続けた証明となるようなゴールだった。スペインとしては前掛かりの状態で低い位置で奪われてはノーチャンスだったかな。このゴールが勝負を決定づけ、ゲームはこのまま3-1。今大会非常にポジティブだったスペインの勢いを経験で抑え込み、そしてジダンやヴィエラというスター達が勝負所を逃さずに仕事をしたフランスがベスト8最後の椅子を勝ち取った。

アナウンサーの「時計の針を巻き戻したジダン!」という言葉の通り、このゲームは最初から最後まで精力的に動き続けたジダンに尽きる。本当にこの日のジダンは美しく、実効的で、チームのために働いた。第3戦を休んでコンディション的に整っていたということもあるのだろうけど、ここ数年ここまで動いていた記憶がないぐらい、良かった。何かろうそくが消える前の最後の強い光なのかと思うと切ないけど、ジダンが光彩を放ったことにはやっぱり感動しちゃいましたよ。朝っぱらから叫んじゃうぐらい素晴らしい。

で、ゲームプランとしても、よくスペインを研究しているように見えた。ジダンのキープからにしても、一発の長いボールにしても、スペインの高いラインの裏を突こうという狙いが一貫して見えた。アンリは非常に多くオフサイドに掛けられたけど、彼への警戒が強くなることでリベリーのゴールを生んだし、それ以外にも2列目の選手が飛び出す形でも良い形を生んでいた。もちろん、長い一発での裏狙いは単調になりかねず、相手にペースを渡しかねないのだけど、相手にとっては怖い攻撃だったかなぁと。で、割り切った守備も又素晴らしかった。スペインのポゼッションをある程度容認しながら、アタッキングエリアに入ったところで一気に潰すという形がうまく嵌っていたかなと。で、その守備におい非常に高い実効力示していたのがヴィエラとマケレレ。展開を読みながらフィルターを掛け、局面では粘り強い対応で次々とボールを絡め取って、スペインにシュートに繋げさせるような形を作らせなかった。「壺を押さえたプレー」というのが言い回しけれど、その言葉ぴったりのプレーぶりだったかなぁと。経験の尊さを感じた。

スペインは……抑え込まれたなぁという感じ。フランスがスペインのやりたい部分の壺を押さえてスペインの良いところを消したというのが大きいのかも知れないけど、ここまで最大の強みとなっていた中盤の速く流麗なポゼッションが実効力を欠いてしまった。まあそのためアタッカー陣もアタッキングエリアで良い形でボールを持てないから、あっさりと消えてしまったかな。ラウールがトップ下に入っていたけれど、こういう形で使うのなら……という印象を持った。

で、グループリーグ第2戦ではびっくりするほど嵌った交代策もこの日は不発、というか逆に穴を作ってしまった。個々で見ればルイガルはなかなか入らなかったバイタルでボールを引き出していたし、ホアキンもドリブルは切れていたけれど、個々の出来と言うよりチームのバランス。ホアキンを右に張らせ、ルイス・ガルシアをセンター寄りのポジションに据えたことでアシンメトリーなポジション構成になり、左サイドをペルニア一人で賄うことになってしまった。ペルニアもどんどん上がっていたけど、その部分でのリスクマネジメントが獲れなかった。結局そのスペースをアンリに突かれたことが勝ち越しに繋がってしまったわけで、そういう意味ではリスクに沈んでしまったかなぁと。まあ何から何までほとんどうまくいかなかった(抑え込まれた)という感じにしか見えなかった。ちょっと残念。

まあ結果論なのだけど、4-2-3-1(4-4-2)への転換は考えなかったのかなぁと。ヴィエラ、マケレレの影響力を逃れられる外からの攻撃がスペインの拠り所となっていたのに、その中で3センターを維持するセナという選択は?という感じを覚えた。個人的にレジェスで良かったんじゃないかな?まあレジェスを入れたところで勝てていたかはわからないけど、レジェスを入れていれば、ペルニアがあそこまで高い位置に上がるたびに大きすぎるリスクを負うことはなかったと思う。まあ結果論だけどね。まあ結果は残念だけど、とても若い才能が多く、又エンターテイメント性に溢れたチームだと思うから、そういう才能をチーム力に反映して、楽しく、実効力の伴ったサッカーを作り上げてほしいな。

とにかくジダンのラストダンスは、まだ続く。相手はブラジル、又もドラマティックなマッチアップだね。今度はきっとロナウドも出てくる。98'の時は見れなかったスーパースターの競演、決着。くぅー楽しみ、ということでとりあえずここまで。やばい、アルヘンティナ-メヒコは明日の試合前までに。総括もう少しお待ちを。試合見てフォローするので精一杯。

|

« 余りに対極的な、2つのゲーム@FIFA WORLDCUP Germany2006 Round of 16 Switzerland vs Ukraine/Brazil vs Ghana | Main | 「らしさ」あっての好ゲーム@FIFA WORLDCUP Germany2006 Round of 16 Argentina vs Mexico »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/77106/10729765

Listed below are links to weblogs that reference 「経験」という重み@FIFA WORLDCUP Germany2006 Round of 16 Spain vs France:

« 余りに対極的な、2つのゲーム@FIFA WORLDCUP Germany2006 Round of 16 Switzerland vs Ukraine/Brazil vs Ghana | Main | 「らしさ」あっての好ゲーム@FIFA WORLDCUP Germany2006 Round of 16 Argentina vs Mexico »