考える力の結実 @ 第84回高校サッカー選手権 決勝
予想も外れたし、高校サッカーにかまってる所じゃないネタが落ちてきたのですが、様々な要素が勝負に絡んでとても興味深いゲームになったと思うので、やっぱりレポート。
第84回 全国高校サッカー選手権 決勝
鹿実:79'迫田亮介 野洲:23'荒堀謙次 107'瀧川陽
鹿実スタメン:GK溝ノ上一志、DF本城宏紀、赤井田侑志、西岡謙太、MF三代将平(→109'玉利侑也)、赤尾公、豊満貴之、諏訪園良平(→83'猿渡裕二)、FW迫田亮介、平田政志郎(→46'飯森裕貴)
野洲スタメン:GK下西要、DF田中雄大、荒堀謙治、内野貴志、MF乾貴士、金本竜一、中川真吾、楠神順平、平原研、FW青木孝太、平石竜真(→64'瀧川陽)
チームの戦い方もストロングポイントも歩んできた道も全てが違う同士の決勝戦。それだけに、単純な力関係ではなく、様々な要素が勝負に掛かったゲームになったのではないでしょうか。戦前の予想を覆す形で野洲が優勝という結果を得ましたが、その野洲優勝の最大の要因は、自らが判断してサッカーをしてきた「考える力」の結実と言う事だったのではないでしょうか。
ゲームの中で、両チームとも自分たちの思うような展開にいなかった前提条件。
鹿実にとっての誤算→押し込んだこともあり、野洲がしっかりとブロックを作り、又1vs1の部分で粘りある対応をされて上回れなかったこと。
野洲にとっての誤算→押し込まれたことで自分たちのスタイルを貫けず、攻撃に出ずらくなっていたこと。
まあそれぞれがこのゲームの中で苦しんでいたかなぁという印象を受けたのですが、その中で考える力というのが、差を生んだのかなと。
野洲の場合は、押し込まれてなかなか攻めに出て行くことが難しい状態の中でいかに相手に脅威を与えるかと課題を抱えたときに、自分たちのスタイルに固執しない柔軟な姿勢を見せた。卓越したパスセンスを持つ平原のスペースパスから、青木・瀧川の縦のスピードを生かしてスペースを使いアタッキングエリアに入っていく。この速い攻めを増やしたことで、相手に常に脅威を与えて、恐怖感さえ抱かせた。
確かに野洲本来の形は、「ボールを繋ぎながらプロセスの中にもふんだんに創造性を取り入れたサッカー」だと思います。しかし、この日見せた形はスペースと使うという形でより合理的にボールを運び、アタッキングエリアで彼ららしい技術の粋を集めたプレーを出す。しっかりとゲームの展開を読み、状況を把握していたからこそ、起きた変化。考えてプレーしている証拠だったのではないでしょうか。
逆に、苦しんでしまったのが鹿実。昨日も書きましたが、基礎スキルの高さを活かすシンプルなサイドアタック(大きな展開とランニングでスペースをシンプルに使う感じかな、蹴れる、止めれるという力を巧く使えていた)が持ち味のチームだと思うのですが、それを巧くゾーンを敷かれたことで封鎖されてしまった(このゲームでは中から外という展開の幅がなかったこともあったかな。野洲の攻撃に怖さを感じていたからこそ、センターでのボールロストを嫌ったのかも知れない)そんな状態になったときに、局面打開が必要になるわけですが、それも野洲ディフェンスの予想外の粘りに適わない。そこで詰まってしまった。
局面打開して、フリーマンさえ作れれば鹿実にはもう少しチャンスも生まれてきたと思うし、彼らの良さである部分がもっと活きたのかなぁと思う(実際同点弾はノープレッシャーの状態での赤尾の美しいアーリーから。DFとGKの間に入る嫌らしいストレートボールだった)。ただ、そこで、単独によるゴリゴリ突破という答えしか出せなかった。例えばオーバーラップだったり、ダイレクトプレーだったり、ワンツーだったり、もう少し崩すという部分に工夫が出れば良かった。でも、選手達はそういう答えを持ち合わせていなかった。それが、選手の自主性、そして「考える力」の差なのかも知れない。
だから鹿実はダメだ、管理サッカー、フィジカルサッカーがダメだなんて言うつもりはないです。今回は鹿実にはネガティブな要素が多すぎたのも事実。背負わされた「常勝」、「連覇」のプレッシャー(優勝したのはあくまでも去年のチーム)。余りに魅力的なニューカマーの誕生に必然的にヒールの立場に立たされたこと。そして鹿実の高校サッカーにおける実力が抜けていたが故のトラブルシューティングが出来なかったこと。そういう事があっても尚逞しいゲームを見せたことは称賛に値するし、良くやったと思う。ただ、サッカーにおいてはそのトラブルシューティングの浅さはあまりにも痛かった。もし、こういう経験が多ければ、一人一人が危機感を持ち、工夫が必要だという事になっていったかも知れない。そういう意味で「連覇」の難しさを感じたのかも知れませんね。
まあそういう部分も含めて、今回はたまたま野洲にポジティブな要素が反映した訳だけど、野洲が全て正しく、又鹿実が全て悪いわけでもない。そして、チームの特徴として、野洲だけでなくどちらも素晴らしいものがあったと思う。ただ、勝負において野洲の選手達の方がより自分たちで考えてプレーしてきた分の厚みがあった。そういう気がします。
で、野洲高校な方々、優勝おめでとう。野洲が見せた技術と判断の融合は紛れもなく現在のJで隆盛を誇る組織的な機能美と又違うクリエイティブなもので、高校サッカーどころか日本サッカー全体に大きなインパクトを与えるほどの質の高いものでした。そして、あれだけのサッカーが出来ながら、勝利にこだわる強い姿勢を持ち、ゲームの流れを読んでサッカーを変えれる柔軟性には驚きすら感じました。それだけ濃密で質の高い指導と経験を積み上げてきた証明とも言える勝利は山本監督並びに選手の皆さんには格別の喜びだったのかも知れませんね。象徴とも言えるプレーで勝利をもぎ取ったこと、改めて言わせてもらえれば「うまい!」ですよ(乾の右サイドから切れ込む突破でDFを引きつけたところでヒール!→クロスする形で平原が右から走り込んだ中川へエロイスルーパス→中川がGKとDFの間に速く正確なクロス→最後は瀧川がフリーで押し込む!ブラジルみたいなコンビネーション)
相変わらずこの監督の会見のアピール発散しゃべりが気に食わないけど(相手へのリスペクトがないからね)勝者だけに許される特権・・・かなぁ。とにかく山本監督も凄いよ、ここまで貫ける事に本当にスペクタクルなフットボールに心酔していると言うことがよく分かりました。
ということでここまでなんですけど、他にも興味深い要素が沢山ありましたね。今回は一番自分が気になった部分をピックアップしましたが、序盤の長いボールの多用に見る勝利へのこだわりだったり、高校生らしい精神的な揺れ動き、技術の質とその活かし方、などもっと書きたい感じですよ。まあなんか収まりが悪くなる感じがするんでやめましたけどね。来年は、この野洲の影響がどのように出るのか、それがとても楽しみです。悪い方に出ない方が良いなぁと言うことを願って、今日はここまでです。
*なんだかんだ言って、野洲の技術レベルの高さはほれぼれするね。判断とか考える力の積み上げを強調したけど、3枚でも平気で抜ききる乾のドリブルテクニックとか、平原のエロイパスセンスとか、青木のスピードとタイミングの良い仕掛け(しかも相手の逆を突く勘の良さ)とか、本当にうまいって感じですよ。青木に決定力がないことが一つの救いであり(ジェフだったらね)、残念な部分であり(ユース代表を考えたらね)
*乾ってまだ2年生なのね、来年までに左サイドも出来るようになってないかなぁ・・・。コンバートでもイイから来年は獲って欲しいね。勿論中京大中京の伊藤翔も忘れるなよ。伊藤はとにかく確保だよ。争奪戦みたいだけど、負けたらフロント首ものだね。
*今年?青木強奪・・・、ダメなら鹿島学園の佐々木がイイかな。ワンマンだったから、負担が掛かっていたけどFWに特化してボールを引き出す技術とかオフ・ザ・ボールの技術が身に付けば、ジュビロの前田みたいになるんじゃないかな?サイズが大きいのもいいけど、何よりも抜ける。岡ちゃんはこねる選手好きだし(偏見)
*てゆうかさ、鹿実のあの攻撃の拙さと力任せ具合にマリを見たよ。あんな感じだよね、確かに。勝負強さはあるんだけど、どこか力任せで。マリにも起これ、レボリューション。
*ちなみに追記めんどくさいからやらね。てゆうかソレドコロジャナイヨ(ラモス風)嘘だと言ってよ、まーちゃん。
*大橋を売るのなら、代わりに小林大悟を買って下さい。交換すれば良いんじゃないかな?お互い金銭的な負担が小さくなるし。レンタルの交換だっていいじゃない。
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Comments
Over the course oof the iniktial period, they began tto form group identities. Even iron won't survive in soil without breaking down to some extent.I am kage level, but I don't get to be called a kage.
Posted by: Charolette | May 30, 2014 04:59 AM